画像: #37 婚姻届と世田谷マダム

バレンタインデーに愛を込めて、提訴します♡

「結婚の自由をすべての人に」訴訟に向けて、クリスマスの夜に我が家で打ち合わせをしてから、まるでジェットコースターに乗ったような日々になりました。年明けに婚姻届を出し、不受理証明書を発行してもらい、書類を整えて2月には提訴するというスケジュールが、既に決まっていたからです。

「提訴のXデーを2月14日にする」という連絡も、密かに届いていました。年明けの情報解禁日まで、厳しい情報統制が敷かれていたので、秘密が苦手な私たちはドギマギしっぱなしです。

「ところで、なんで2月14日なの?」と訊くと、「だって、バレンタインデーじゃないですか!」と、満面の笑みで答えてくれた弁護士のHさん。愛を告白する日に、国を相手にケンカ上等、提訴をぶち込んでくるとは、さすが……。

というわけで1月の半ばまでには、なんとしてでも婚姻届を区役所に出さないといけない。リミットまであと半月。年末年始は区役所も閉庁します。ほかにも細かい準備が山のようにあるというのに、私たちはまだ婚姻届を書いてないどころか、婚姻届も用意していません。

「やばい! 婚姻届をまずはもらってこなきゃ!」

年末進行で仕事が押していた私は、役所の開庁時間に間に合わず、時間外窓口へ。

「あの~、婚姻届をいただきたいのですが……」

「婚姻届ですね、おめでとうございます」

と、優しそうな年配女性がまっさらな婚姻届を1枚、差し出してくれました。

「おめでとう、かぁ~」

かつて男性と結婚した時にも、かけてもらったこの言葉。その時は、なんとも思わなかったけれど、不受理になると分かっている婚姻届をもらう時に聞くと、なんだか切なくなりました。しかし、そんな切なさに浸っている場合ではありません。一緒に婚姻届を提出する世田谷DPRの仲間たちの分も(書き損じ用も含めて)貰わないといけないのです。

「あの~、もう少しもらえますか? あと……20枚くらい」

明らかに不審です! 窓口の女性の顔を見ると、「どれだけ書き間違えるつもりだ? この人は」と書いてあるかのよう。私のようなおばさんが「婚姻届をください」と言うのだってハードルが高いのに、加えて大量の婚姻届を欲しがるなんて……。しかし、ここで引き下がるわけにはいきません。

「ハッ、もしや結婚詐欺みたいに見えますか? いや、違うんです! 私たち同性カップルで、合同で婚姻届を出そうと思っていて……」

と説明したいところですが、不審な印象はぬぐえなそうなので何も言わずに、なんとか20枚の婚姻届をもらい、そのまま逃げるように帰ってきました。

 

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