無人島での生活は動物と暮らすための訓練でした

僕は言ったように開拓団(※当時の満州国・満蒙開拓団)で、もう何にもないとこで育ったから。それが大きなモチベーションになってるんですよ。「あれを作ろう」って思ったらじっくり働いて工夫して作らなきゃいけない。そうすると便利になってね、楽しくなってくる。

そのためにはまず岩海苔が食えるということを知らなきゃいけないんですよ。食えるということを知ったらどうやって食おうかっていうことになるわけですよ。朝、味噌汁に入れるわけですよ。美味しいんですよ。岩海苔をお箸でつまんでご飯にのせるわけ。そうするとご飯が進むわけですよ。これまた美味しいわけですよ。干して海苔にして、その海苔をどうしよう。もう面白くてしょうがない。

次から次に知ることで、人類が工夫してきたことに直面するんです。自分が最初に工夫したわけじゃないけど、僕は経験として知ってるでしょ。それをぽつぽつと女房と娘に言うことでお互いに楽しんでできる。楽しんでやるって言うことがやっぱり一番大事だねぇ。

だって岩についた岩海苔から板海苔にしてさ、その海苔を今度は工夫して自分で釣った魚でこうやって寿司を作る。手巻き寿司。手巻き寿司なんて前は流行ってなかったですよ。うちの番組でやったのが初めてじゃない? フォアグラのお茶漬けなんてその頃僕らがやったんですよね。握り寿司を作って、上にフォアグラをのせたりね。それを作るでしょう、テレビでやるでしょう。で、何年かして海外に遊びに行くでしょ。寿司屋に行くと、「うちにはフォアグラの寿司があります」って(笑)。

無人島での暮らしは、子どもへの教育と同時に、ぼく自身と女房教育でもあるんです。そういうことができなきゃこれからやっていけないよっていうね。僕は将来、動物と暮らそうと思ってましたから、できなきゃいけないよって、それには女房自身も自分を鍛えなおす必要がある。だから単純に作ったわけじゃないんです、動物王国っていうのは。そういうことの積み重ねでできていたわけですね。

 

後編へつづく

 

ムツゴロウさんの人生年表

●1935年 福岡市に生まれる。北満(現在の中国)・大分開拓団の小学校に入学。中学、高校時代は大分県日田市で過ごす。

●1954年 東京大学理学部生物学科に入学。卒業後は生物系大学院に進む。

●1960年 学習研究社(現・学研ホールディングス)映画局に入社し、記録映画の制作を行う。

●1968年 学研退職し著作活動に入る。『われら動物みな兄弟』で第16回エッセイストクラブ賞受賞。

●1971年 北海道厚岸郡の無人島に、熊や馬を連れて家族で移住。翌年、浜中町に移り「動物王国」を建国(現在は町に返却)

●1977年 第25回菊池寛賞を受賞。『畑正憲作品集』、『ムツゴロウの青春日記』、『ムツゴロウの動物交際術』などを刊行。

●1978年 北海道/中標津町に自宅とムツ牧場を設立

●1980年 フジテレビで『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』が放送開始。番組のため21年間、世界中を旅する

●1986年 映画『子猫物語』を監督

●2004年 画集『ムツゴロウとゆかいな動物たち』を刊行。

●2011年 『ムツゴロウの地球を食べる』で第一回日本動物学会動物教育賞を受賞。

●2012年 BSフジで『ムツゴロウのゆかいな動物図鑑』がスタート。

●2018年 『サンデー毎日』、『週刊プレイボーイ』の連載など、執筆活動を行う。

 

PROFILE

画像: PROFILE

畑 正憲さん Masanori Hata
動物学者、プロ雀士、作家。ムツゴロウさんの愛称で知られている。1935年4月17日福岡市に生まれる。医師の父が満州国(現・中国)に赴任したため、幼年時代を満蒙開拓団の村で育つ。東京大学理学部で動物学を学んだ後、学習研究社(現・学研)に入社し、『純白の太陽』などの教材用記録映画を作る仕事に従事。小学・中学時代の同級生である女性と結婚し、一女を設けるその後、同社を退職し作家活動を行う。1971年に動物との共棲を目指して家族3人で北海道の無人島に移住。後にこれがフジテレビ系『ムツゴロウの動物王国』(1980年~2001年放送)へと発展する。画集や映画、エッセイなど作品多数。

 

Photo:Masaru Furuya Text:Chihiro Nishizawa Composition:Shiho Kodama

 

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