エッセイストのしまおまほさんが、今を生きるバラエティに富んだ子どもたちに出会い、話を聞き、限られた時間で彼らの本音を引っ張り出す。コドモ連載の第19回が始まります~。

 

第19回
ササネちゃん(11歳)

画像: 第19回 ササネちゃん(11歳)

 

待ち合わせた学芸大学のカフェ。ササネちゃんに会ってドキッとしてしまいました。なぜなら……口紅をつけていたから。くすみの少し入ったモーヴピンク……大人っぽい色選びです。

この日は、ササネちゃんのダンスレッスンの前にのインタビューでした。付き添ってくれたのは、ササネちゃんの伯母さん(お父さんのお姉さん)ペリさん。 DJをしている、かっこいい伯母さんです。

 

6歳から、ヒップホップダンスやってます。

まほ:ダンスはいくつから始めたの?

ササネ:3歳くらいから……。最初はママがやってたタヒチアンダンスを一緒に習ってて……、今は、ヒップホップダンスを習ってます。

まほ:ヒップホップはいつから?

ササネ:6歳から。

ペリ:甥っ子(ササネちゃんのお兄ちゃん)もダンスしてるんですよ。

ササネ:うん。

まほ:ヒップホップ?

ササネ:ううん。シカゴフットワーク。

まほ:なんかフットワーク軽そうなダンスだね。ササネちゃんは、今日はヒップホップのレッスンなの?

ササネ:ううん。ライトフィートのレッスン。

LITE FEET(ライトフィート)とは、NYのハーレムから普及した今最も注目されているダンススタイル。軽やかにステップを踏みながら帽子やスニーカーを使った技(トリック)を取り入れたり、バトルをしたりするそうです(ネットで調べた情報をそのまま書いてます……)。

ササネちゃんはヒップホップダンスを習うかたわら、ライトフィートのアジアファイナル本戦まで勝ち進んだ一でもあるのです。アジア大会出場に向けて、お家のある神奈川県から都内までレッスンに通っています。

まほ:学芸大学まで1時間以上かかるよね……。11歳だとひとりで来れちゃうんだ~。すごいね。

3歳の息子がいるわたしにとって、自分の子がひとりで電車移動する日が訪れるなんて、想像できません。だから、子どもがひとりで何処かへ行く話を聞くたびに感心しちゃう。大きなランドセル背負った小学校低学年の(賢そうな)子が地下鉄のホームでひとり、本を読んでいるのを見かけるだけで涙が出そうになります。

画像: 6歳から、ヒップホップダンスやってます。

 

気になるiPodの中身は……?

まほ:移動の間は何してるの?

ササネ:音楽聴いてる。

まほ:例えば、どんな?

ササネ:Masego。

まほ:ませご?

ササネ:Masego……。

Masegoはジャズをベースにヒップホップ、R&B、ハウスなどを昇華させた ”トラップ・ハウス・ジャズ” で新たなシーンを作り出すシンガー・ソングライター(すべてネットで調べた通りに書きました)。

まほ:iPhoneに音楽入れてるの?

ササネ:ううん。iPod。

まほ:iPod……これ、iPhoneでしょ?

ササネ:iPod。

まほ:iPodって、もっと……小さくて薄くなかったっけ? それはiPod nanoだっけ? 上半分が画面で、下半分が丸いクリクリッて操作するヤツ……あれがiPodだよね?

編集オガワ:あ、でも端っこに「iPod」って文字が書いてありますよ。

まほ:(iPodを手にとって)ああ、本当だ。iPodなんだ、コレ。えー、今のiPodってこんななんだ~。

iPodひとつで40代はあーだこーだ大騒ぎ。ササネちゃんは何がなんだか意味がわからない様子。

まほ:あ、なるほど。正確にいうと、コレはiPod touchっていうんだ。へー。iPhoneのカタチしたiPodってことかな。

ササネ:うーん……たぶん。

まほ:じゃあ、これは普段ネットにはつながってないんだね。

ササネ:うん。Wi-Fi使えるところでTik Tok見たり、LINEしたり。

まほ:なるほどね。で、そうだそうだ。音楽。何入れてるの? 見せてもらえる?

ササネ:うん。

iPod、待ち受け画面がシンプソンズです。

まほ:「NO SMOKE」の 「Klondike Blonde」……アレ? どっちが名前だろ? 「Klondike Blonde」の「NO SMOKE」か。どっちにしろ知らんな……。「SHABBA RANKS」……の「Ting-a-Ling」 かな。ABBAみたいな名前だな……。ODB?

ペリ:ウータン・クランの人みたいですよ。

まほ:うーたん? 「みいつけた!」の? ……TLC! やっと知ってる!

ササネちゃん、レフト・アイのファンなんだって。他にも清水翔太や星野源など日本のアーティストの楽曲も入っていました。

まほ:小5にして、このプレイリスト……。どうやって好きなアーティスト見つけるの?

ササネ:ダンスの先生に教えてもらったり、教室でかかってる曲を……。

まほ:Shazam?

ササネ:(うなずく)

まほ:現代っ子じゃの~! じゃあ、教室ではWi-Fiがつながってるんだ。

ササネ:ううん。つながってない。

まほ:え? じゃあ、Shazamできないじゃん。

ササネ:できるよ。

まほ:Shazamってオフラインでも曲名わかるの?

ササネ:教室でShazamに保存して、あとでネットにつながってから調べる。

まほ:えっ!

ペリ&オガワ:ええっ!

まほ:Shazamって、今そんなに賢いの?

ペリ:知らなかった……。

ショックを受けているわたしたちに、ササネちゃんはキョトン顔。調べてみると、Siriに「この曲なに?」と聞かせるだけでShazamが起動するとか。あと、イントロクイズもしてくれるんだそうです、今のShazamは。進化についていけない!

画像: 気になるiPodの中身は……?

 

学校で流行っているのは、Tik Tokと定規戦争!?

まほ:学校の友達と音楽の話とかしないんじゃない?

ササネ:しない(キッパリ)。

まほ:ササネちゃんがダンスの日本代表ってことは?

ササネ:知らない。

まほ:みんなの前で踊ったことは?

ササネ:2分の1成人式で1回だけ。それ以外はない。

まほ:ダンスが上手いと、自慢したくならない?

ササネ:ならない(キッパリ)。

まほ:学校は好き?

ササネ:うん。

まほ:学校で……ソーラン節とか踊るでしょ?

ササネ:うん。それも楽しい。

まほ:別物?

ササネ:うん、べつもの。

まほ:学校で何が流行ってる?

ササネ:Tik Tokと定規戦争。

まほ:これまた差があるな……! 定規戦争って、定規を机から落とす遊びだよね?

ササネ:うん、マイネーム(ペンの商品名)ではじく。

まほ:マイネームって決まってるんだー。給食は何が好き?

ササネ:あげパン。

まほ:ああ、美味しいよねえ。学校生活も楽しんでいるのね。学校に気持ちが許せる子は?

ササネ:いない。

まほ:ダンスの教室にはいるのかな?

ササネ:うん。相方。

まほ:相方か!

ササネ:幼馴染のナナハ。一緒にダンス始めた。

まほ:ダンスの動画、ある?

ササネ:うん。インスタにあげてる。

画像1: 学校で流行っているのは、Tik Tokと定規戦争!?

インスタで見たのは、言葉数少ないササネちゃんとは別人のような、キレのあるワイルドなダンス。髪の毛も編み込んで、ファッションもバッチリきめて。超COOL! です。

 

まほ:すごい。かっこいい~。

ペリ:これで、ササの情報はゲットしてるから。

まほ:なるほど。姪の近況をインスタで知る、と。

ペリ:あと、、伯母バカなんですが……ササのTik Tokもすっごいかわいいんですよ。

まほ:どれどれ……えっ! フォロワーが4万人……! インフルエンサーじゃん!

ササネ:(小さくうなずき照れ臭そう)フフ……。

ササネちゃんのTik Tok、お洒落もメイクも、音楽とポーズも、バッチリ決まってて。フォロワー数が多いのもうなずけます。

まほ:学校でTik Tok流行ってるんだよね? もちろんみんな、ササネちゃんのアカウントも知ってるんだよね。

ササネ:うん、見たことあると思う。

まほ:すごくない? 4万人て。驚かれない?

ササネ:いや、べつに……。

どこまでいっても、いたってクールなササネちゃん。読書、特に伝記が好きでマザー・テレサやアンネ・フランクを読むそう。わたしが同級生だったら、真っ先に憧れの対象になってるなあ。

まほ:Tik Tokでメイクしてたけど、今も口紅してるよね。

ササネ:うん。ダンス通う時は口紅してる。

まほ:そっかあ。じゃあ、ササネちゃんには学校のササネちゃんと、それ以外のササネちゃんがいるんだね。

ササネ:うん。

まほ:カラオケとかも行ったりする?

ササネ:うん。家族で行く。

まほ:その時は何歌うの?

ササネ:え、普通に……。

まほ:普通に?

ササネ:マイケル・ジャクソン。

まほ:かっこいい~!

☆ おまけ ☆
 
ササネのフェイバリットミュージックベスト4
Lil Wayne「Uproar」
Masego 「You Gon’ Learn Some Jazz Today」
Klondike Blonde 「No Smoke」
Busta Rhymes「Hustler's Anthem」
 

つづく

画像2: 学校で流行っているのは、Tik Tokと定規戦争!?

 

PROFILE

しまおまほ Maho Shimao
1978 年生まれ。エッセイスト、イラストレーター。主な著書に『ガールフレンド』『マイ・リトル・世田谷』(共にスペースシャワーブックス)などがある。

 

Text・Illustration:Maho Shimao Composition:Tomoko Ogawa Design:Shinji Nemoto

 

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