画像1: #17 写真家・若木信吾さん

今月の人。

画像: 今月の人。

写真家/映画監督 若木信吾さん
1971年、静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌、広告、音楽媒体など幅広い分野で活動中。雑誌『youngtreepress』の編集発行を手がけ、故郷、静岡県浜松市の書店『BOOKS AND PRINTS』のオーナーでもある。撮影、監督を務めた映画作品に2007年『星影のワルツ』、2009年『トーテム~song for home~』、2015年『白河夜船』(原作:吉本ばなな 主演:安藤サクラ)などがある。また、自身の子育ての経験から、今年9月より絵本レーベル “若芽舎” を新たに立ち上げ、ミニ絵本シリーズの刊行をスタートさせた。

 

親子の会話が盛り上がる!
文字ではなく“絵を読む”
遊び心満載の斬新な絵本

『そら、にげろ』

作・絵:赤羽末吉 ¥1600/偕成社

主人公は鳥の模様の着物を着た旅人さん。ある日、犬に吠えられて、旅人さんの着物から鳥たちが逃げ出しました。そこで彼は野を越え、山を越え、川を越え……春夏秋冬と季節が移り変わる中、ひたすら鳥を追いかけます。ライプチヒ国際図書デザイン展金賞受賞。

Illustration:Kashiwai

「この絵本は、文字が最初と最後のページに、ほんのちょっとだけしかないんです。状況は絵で説明してくれるけれど、主人公の気持ちを表すセリフもないから、親と子どもがおしゃべりしながら物語を作っていくわけですよ。『待て、待て~』とか、読み聞かせをしている親の言い方次第で、子どもの興味をいかに引き出せるかが勝負です(笑)」

 

まだ文字の読めない幼い子どもにとって絵本はコミュニケーションツールのひとつ

「子どもが泣いているとき、お母さんは母性本能がくすぐられるのか、ちゃんとあやすことができますよね。でも、男親だと、どうして泣いているのか分からず、お手上げ状態になっちゃうことが多くて。そんなとき、絵本を読み聞かせると、子どもが笑ってくれることがあったんです。それが嬉しくて、どうやって楽しませるかを考えるようになりました」

写真家の若木信吾さんが、現在4歳の息子さんに絵本の読み聞かせを始めたのは、生後半年くらいの頃。子どもが生まれた当初は、家には絵本がまだ一冊もない状態だった。

「最初は写真集や画集を見せながら、子どもに語りかけていました。それで、親の語りかけ方次第で、子どもの反応がぜんぜん違うことに気づいたんです。やっぱり読み聞かせは、基本的にコミュニケーション手段のひとつだなと」

そんな彼が最近出会ったおすすめの絵本は『そら、にげろ』。作者の赤羽末吉が描く日本画風の美しい絵は、歌舞伎の舞台のような華やかな背景が印象的。主人公の旅人が、自分の着物の柄の鳥を追いかけて、一年中、旅をしていくという斬新なストーリーだ。

「雨が降ればハスの葉を傘にしたり、柿の木の下で鳥たちと一緒に柿を食べながら一休みしたり。文字がないから、いかようにも読むことができるんです。毎回、読むたびにこちらの感情も変わるし、語りかける内容も変わるので、子どももおもしろがる。親が自分なりのパフォーマンスを見せることができて、子どもと一緒に盛り上がれる絵本ですね」

 

子どもへの読み聞かせをきっかけに
幼児向けの絵本プロジェクトをスタート

一般的に絵本とは、子どもが自由に選び、自分でページをめくりながら、おもしろいところを発見するものだというイメージがある。ただし、そういう楽しみ方ができるのは、ある程度、子どもが大きくなってからのこと。

「それ以前の段階、つまり子どもがまだ本というものが何かも分からなくて、おもちゃのひとつだと考えているときは、やっぱり親がリードしていくのがいいと思うんですよ。ページはこうやってめくるんですよ、この中には絵やお話が入っていますよ、といったことを含め、親を通して、子どもは学んでいく。親の働きかけ方によって、子どもも興味を持つようになっていくと思うんです」

写真家としての仕事の傍ら、書店を営み、出版社の発行人を務めている若木さんは、この秋、絵本レーベルを新たに立ち上げた。今、手がけているミニ絵本シリーズは、2歳くらいの幼児を対象にしている。もともと本が好きな若木さんだけに、いつかは絵本を作りたい、という気持ちを昔から抱いていたのだろうか。

「いや、子どもが生まれる前は、まったく考えたことがなかったですね。読み聞かせを始めたのをきっかけに、次はどんな絵本がいいかなと調べるようになって。自分が70年代生まれというのもあり、まずは70年代のことをいろいろ調べたんですよ。そうしたら、当時は絵本ブームで、イラスト、絵画、詩など各分野からいろんな作家たちが集まって『いい絵本を作ろう!』と盛り上がっていたことが分かったんです。

当時の絵本作家たちの対談集などを読むと、どこか、50年代にそうそうたる顔ぶれの漫画家たちが住んでいたトキワ荘にも通じるような熱量とパワーを感じました。その中でも、長新太さんの個性は飛びぬけていましたね。時代的にもマーケティング云々より、とにかく『子どもたちをいかに喜ばせるか』ということに集中できる良さがあって。そのピュアさに惹かれました。これをやってみたい! と(笑)。

それで、これまでに僕の浜松の書店で個展を開いたことのあるイラストレーターさんたちに『一緒にやろうよ!』と声をかけたら、みなさん快諾してくださって。絵本って、写真集と同じくヴィジュアルのアイテム。写真やアートでは、ここ10年くらいコンセプチュアルなものが流行っていたけれど、僕自身はそれよりも、瞬間的に心をガッとつかまれるような感じのものが好きですね」

 

本好きな子どもに育つためには
本が何となく家にある、という環境が大事

「自分が子どもの頃に読んでいた絵本を振り返ると『モチモチの木』や『スイミー』が思い浮かびますね。3歳以降の記憶だけど。あと、家にあった絵本シリーズで覚えているのが、当時テレビでCMもよく流れていた『チャイクロ』。なつかしいです」

幼い頃、絵本の読み聞かせをしてくれたのはお母さん。小学校に上がってからは、お父さんがよく本屋に連れて行ってくれた。本好きになったのは、やはり両親の影響が大きい。

「部屋に本棚があるとか、本が何となく家にある、っていう環境がすごく重要だと思います。背表紙だけは見ているけど、中身は知らないものがあるっていうのは、おもしろくないですか? 僕も子どもの頃は、写真図鑑やグラフ誌は見られるけど、まだ本は読めないという時期があって。

いつかは読みたいと思いながら、挿絵を見て、中には何が書かれているのかな? と想像していました。また大きくなってから読むと、想像していた内容とは全然違ったりして。『数の悪魔』なんて、カバーに悪魔の絵が描いてあるから、うわ、この本、すごくおもしろい話なんだろうなと思っていたんだけど、いざ読んでみたら、数学の話だった
(笑)」

親になった今、息子に見せたい本はたくさんある。でも、あせりは禁物。4歳ともなれば、自分の好みもどんどん出てくる。

「やっぱり本人が見たいっていうものじゃないと、途中で気持ちが止まっちゃうから。すごく幼い頃は親のリードが必要でも、大きくなってくると、少しずつ本人まかせになりますね。親ができるのは、まず本棚にどれだけ取り揃えておくかっていうことかな」

自宅のリビングには一方の壁際に子どもの本棚、もう一方には若木さんの写真集が入っている巨大な本棚がある。

「いつかこっち側(写真集がある方)の本棚に移ってほしいなぁと(笑)。そうしたら、いろいろ説明しながら一緒に読めるのになぁって。今のところ、息子が好きなのは車が写っている写真。まずは、そこからスタートです(笑)」

 

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