画像: #25 手さぐりのウエディング その2

そうか、おめでたいんだ、私たち

先日、上の子が誕生日を迎えました。祝、ハタチ。とうとう成人です。留学中で日本にいませんので、お祝いムードでもないのですが、それでも一区切り。これからはどんどん離れていく一方。あんなに大変だった子育ても、過ぎてしまえばアッという間。夢を見ていたみたい、というか、狐につままれたような気分です。

今回は結婚式の話の2回目です。同性結婚はできなくても、結婚式はできる。そう思いついて麻ちゃんに「結婚式をしよう!」と、持ちかけて始まった大騒動。しょっぱなからケンカを繰り広げ、結婚式ってそもそもなんだっけ?という話し合いを経て、麻ちゃんがいくつかのホテルや式場に手紙を送りました。さてさて、同性カップルでも結婚式をさせてくれるところは見つかるのか……。

返事はなかなか来ませんでした。1週間が過ぎ、10日が過ぎ、ヤキモキも峠を越した頃でした。諦め半分で開けたポストに大きな封筒。そこには見慣れぬホテルの名前が! 10通ほど出した手紙のうち、2ヵ所から返事が届いたのです。すぐに封筒を開きたくてウズウズしましたが、麻ちゃんの帰りを待ちました。テーブルの上の2通の封筒。どんな返事が入っているのか? 異性カップルの結婚式だったら、しなくていい準備です。封筒を眺めて「なかなか先が長いなぁ」という気持ちにもなりました。

「ただいまー」。麻ちゃんが帰って来ました! いつもなら玄関に出迎えもしませんが、思わず玄関まで走ります。「返事が、来た!」。テーブルに座り、2人してドキドキしながら封を開けました。手紙には話し合いをしたために返事が遅れたことのお詫びと、喜んでお引き受けしたい旨が書かれ、婚礼課の担当者の名刺が挟まれていました。

よかった! ともかく結婚式、できるんだね!

手を取り合って喜びました。それをきっかけに、バラバラと返事が届き始めました。断られたところも、いくつかありました。理由は“前例がないから、判断ができない”というもの。“前例がなければ、作るしかないのに……”とは思いましたが、それでも全てのホテルが、きちんと書面で返事をしてくれました。

次に、週末ごとに「いいよ」と言ってくれたところを見学しに行きました。“見知らぬ人にカミングアウトして、何かをする” のは、これが初めての体験。ドキドキしながらひとつめの海沿いのホテルへ向かいました。ちょっとリゾート風のリラックスした雰囲気が素敵なホテルで、到着すると既に担当の人が待っていました。緊張した面持ちでしたが、こちらはもっと緊張していますから、お互いアワアワとした挨拶を交わしました。そして婚礼打ち合わせスペースにご案内、となったのですが、担当者がこうおっしゃったのです。「婚礼打ち合わせのスペースは、オープンスペースでして、周りの方々と近いテーブルでの打ち合わせになりますから、個室をご用意しました」。確かに婚礼打ち合わせの広い会場では、テーブルがいくつも並んでいて、そこで結婚を控えたカップルがそれぞれに打ち合わせをしていました。かつて結婚式をした私にも見覚えがあるものです。言われてみれば確かに、そこへ同性のカップルが着席したら、好奇の目で見られるかもしれない。そこをちゃんと気遣ってくれたのでした。

個室に着くと、さらにビックリ。婚礼課の課長さん以下4人のスーツ姿の男性と女性が、さほど広くない個室にあらたまった面持ちで並んで座り、こちらに気づくと一斉に立ち上がり……

「このたびは、おめでとうございます!」

婚礼課の挨拶とはいえ、「おめでとうございます」なんて言われたことのない私たちは、この第一声にいたく感激してしまいました。

そうか、めでたいんだ。私たち、結婚式をあげるんだね!

そんな気持ちが一気に高まりました。

私たちの結婚式を引き受けると言ってくれた会場は全て見学に行き、悩みに悩んで、ひとつめに見に行った海沿いのホテルに決めました。なかには力強く「是非やりましょう!」と言ってくれた高級ホテルもあり、そこは本当に素敵だったのですが“今の私たちには、ちょっと背伸びしすぎ”ということで潔く諦めました。

 

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