画像1: 第2回 “子どもの虐待に対して、わたしたちでもできることって?”

<#わたしたちでもできること ベビモフ特別対談>

この世から児童虐待がなくなるように、との願いから「♯こどものいのちはこどものもの」というチームを組み、さまざまな活動をしているイラストエッセイストの犬山紙子さん。児童相談所で長年子どもの問題を扱ってきた元児童心理司で、『告発 児童相談所が子供を殺す』などの著書もあるカウンセラーの山脇由貴子先生。

児童虐待の根絶に向けた活動を続けているお二人に、“#わたしたちでもできること”というテーマで対談していただきました。
※お二人の対談を3回に分けてお送りします。

 

自分も子育てや仕事でいっぱいいっぱい。
そんなときに、児童虐待に対して
できることってなに?

犬山:はぁ……こうした虐待の実態を聞いているだけでも相当しんどいです。私たち、ベビモフを読んでいる人たちって、子育てしながら仕事をされている方も多いかな。とにかく毎日大変だと思うんですよ。なので、児童虐待に対して何かアクションを起こそうと思うと、すごくハードルを感じてしまう。マザー・テレサみたいな人じゃないと、やれないんじゃないかとか。私ひとりが動いたところで、とか。いや、そもそも今、自分の子育てでいっぱいいっぱいだから、そんな余裕ないわ、とか。

私も今回、アクションを起こすまでは、そういうイメージが強くて。でも、そんな余裕がない人でも、何かワンアクションで、ちょっとは状況がよくなるんじゃないかと思うようになったんです。虐待を受けているかもしれないお子さんがいるとしたら、近所の人はどんなことができるんでしょうか?

山脇:とにかく私が一般の方向けに講演するときに言っているのは、みなさんがおかしいなと感じたら、大抵の場合、きっとそのおうちに何かあるということです。児童相談所の職員のほうが、慣れすぎているせいで「これくらいなら、あんまりおかしくない」って思っちゃうので。

犬山:でも、一般の方にはなかなか見抜けないことも多いと思うんですよ。何かこういうサインがあったときは、気をつけたほうがいいという例はありますか?

山脇:たとえば、家に帰りたがらないとか。基本的に、幼児から小学校低学年くらいまでの子が、夕方以降ひとりでフラフラしているのは危険ですよね。これはまず間違いない。

あと、これは他人には分からないかもしれないけれど、夜、親が家にいないっていうのは絶対にダメですよね。仕事柄もあるのかもしれない。朝の5時まで仕事していましたっていう人も職種によってはいますよね。でも面倒を見る大人が誰かいる必要はあります。

犬山:夫や祖父母とか、誰かがいるんだったら、いいけれども。夜、子どものそばに大人が誰もいないっていうのはダメですよね。

山脇:それに付随して、子どもひとりでコンビニに行く、みたいなことも出てくるので。

コンビニでは、おなかが空いて万引きする子もいれば、親に万引きさせられる子もいますし。コンビニにそういう子が来たら、通報するという運動をやっている地域もあります。そういう運動も広がっていくといいですよね。

犬山:すばらしい! コンビニで何かできないかな? っていう話、ちょうど先日していたんです。もう何かやるとしたら、民間なのかなって。街中にたくさんあるところ、コンビニとか、歯医者とか……。

山脇:歯医者にはガイドラインがありますね。

犬山:やっぱり虫歯だらけとか?

山脇:虫歯が多いのは、虐待のサインですからね。過去の経験では、5歳と6歳の男の子の兄弟で、虫歯がひどくて離乳食しか食べられないというケースがあり、その日のうちに保護しました。あと、朝ごはんを食べてこないとか、やせすぎているとか。小学生だったら、給食をあまりにもガツガツ食べているとかね。「大食いの子なんです」って言われちゃうかもしれないけど。

犬山:給食ドカ食いとセットで、不潔だとか……。

山脇:保育園に通っている子で、いつもすごく不潔で、持ってくるタオルも汚くて、みんなと一緒にプールに入れられないというケースもありました。

犬山:自分の家の前でポツンと立っているみたいな子は?

山脇:家からの閉め出しは、もう絶対に110番。ためらわず。ベランダに出すのも、基本は110番だと私は思っています。やっぱり亡くなってしまう子がいるので。

 

いきなり児童相談所に連絡する前に
できることはたくさんある

犬山:気になる子がいた場合、ハードル低めのできることって、何がありますか?

山脇:ひとつは保育園や幼稚園、学校の先生とか、その子に関わる人に話をしてみるっていうことですね。先生は園や学校でしか子どもの姿を見ていないので。放課後はこんな様子なんですよね、っていう情報が入ると「放っておくわけにはいかないな」となる。そこから、先生たちが子ども家庭支援センターや児童相談所に連絡しようか、っていう流れができると思います。

だから、気になる子を発見したら、まずは仲のいいママ同士でもいいので、ちょっと情報を集めてみて、その情報を集約したものを先生に持って行く。先生がママたちに言ってくれるかどうかは分からないけれど、もうすでに子ども家庭支援センターが関わっている、という子どももいるかもしれないですし。「あの子についてはすでに把握しているので大丈夫です」と先生に言われれば、これ以上心配しなくていいんだなって思えるじゃないですか。

犬山:そうですね。いきなり自分が児童相談所に連絡するとなると、ハードルが高いと感じる人も多いと思います。なんか自分のせいで、あそこの家がバラバラになるのかな……? って思うと、ビクビクしてしまって。先生だったら「すみません。ちょっと匿名でお願いしたいんですけど」みたいな感じで、相談しやすいかな。

山脇:ただ、先生によっては、相談した後、すぐにその子の親に連絡しちゃった、というケースもけっこうあるんですよ。だから、ママたちから「先生はどうされますか?」と聞いてみるといいですよね。先生に「まず、親に確認します」と言われたら「それは危険ではないですか?」って。先生が親にいきなり連絡しちゃったせいで、家に帰った子どもが親に責められたなんてことがあると困るので。

犬山:まだ園にも入っていない乳児の場合は、どうしたらいいんですか?

山脇:乳児の場合は保健所になりますね。保健師さんなどが新生児のいる家庭を訪問する

“新生児訪問”のほか、生後4ヵ月までの乳児がいる家庭をスタッフが訪問し、産後のサポートをする“こんにちは赤ちゃん”事業なども各自治体でやっています。

犬山:うちの子が生後1カ月のときに来てくれた保健師さん、すっごく優しい方でした。

山脇:だから自分の子の健診のついでに「ちょっと気になる子がいて」っていう話をしてもいいわけですよ。歯科健診とかもありますし。あとは、各自治体の子ども家庭支援センターのほとんどが、0歳~3歳を中心として親子で遊べるような“子育てひろば”を開設しています。そこにはちゃんとプロがいますから。

犬山:乳児のママたちって、児童館にもけっこう行っていますね。

山脇:自分の子どもが児童館や学童を使っていたら、そこの職員の方にちょっと言ってみるというのもいいかもしれない。一番話しやすい人に。

犬山:なるほど。この知識はシェアしたいですね。

山脇:それに、子ども家庭支援センターって、子どもを預かってくれるショートステイやトワイライトステイの窓口など、働くお母さんにとって活用しやすいサービスがいっぱいあるんですよ。登録しなきゃいけないのが面倒くさいっていう人もいますけど。費用もそんなに高くないですしね。だから、住んでいる自治体の情報を一度しっかり調べてみるといいかもしれない。

犬山:でも自治体のホームページって、見づらいんですよね……。

山脇:役所や支援センターにはリーフレットがいっぱい置いてあるので、一度行ってもらってくるのもいいと思いますよ。

 

緊急性のある場合はどこに連絡すればいい?
児童相談所と子ども家庭支援センターの違いとは

――厚生労働省が作った児童相談所全国共通ダイヤル189(いちはやく)はどうですか?

山脇:“いちはやく”は電話しやすい反面、実はそんなに早いわけじゃないんですよね。相談員が電話を受けた後、担当の児童相談所に連絡を入れるという流れなので、むしろ時間がかかっちゃう。緊急性があるときは、地区の児童相談所に直接連絡したほうが確実です。児童相談所に直接来た連絡は、虐待通報として「このケースはどうしましょうか?」って、緊急受理会議をするので。そっちのほうが、よっぽど早いです。

さっき、犬山さんは「自分が連絡したせいで、その家がバラバラになったら……」と心配していたけれど、通報があったからといって、すぐに児童相談所が子どもを保護することはないですよ。たくさん調査をして、それから預かるかどうかを会議で決めるので。もちろん、その子が全身傷だらけ、アザだらけだったら、すぐ保護しますけど。

犬山:うん、たぶんそのことを知らないからハードルが高いと思うので。この知識があるといいですよね。

山脇:その一方で、今どきは子ども本人が「家でお母さんに叩かれている」とか「家に帰りたくない」って連絡をして、即、保護になるケースもあるんです。親に何か嫌なことをされると「それ虐待だから!」って騒ぐ子もけっこう増えていて(苦笑)。軽い一言で、すごいことになっちゃうよ、というのを子どもにも知ってほしいですね。

あと、児童相談所じゃなくて、子ども家庭支援センターに「気になる子がいる」って通報するのでもいいんです。支援センターには子どもを預かる機能がないので。そこにはどんどん情報を入れてもらって大丈夫。

 

自分の子どもに「気になる子」のことを
聞いてみる――というのも、ひとつの方法

山脇:そのほかに、自分の子どもに「気になる子はいないか」を聞いてみてもいいかなと思っていて。

犬山:あ、いいですね。例えば虐待のニュースがあったときに、子どもに「友達でしんどそうな子がいたりする?」って。それ、すぐできることだ。

山脇:で、気になったら、お母さん同士で情報共有してみる。ただ、お母さんたちも忙しいですけどね。

犬山:でも、虐待のニュースがあって、何かしたいけど、何もできない。そんなとき「じゃあ、一回ちょっと集まってみましょうか?」って、ママ会をやるだけでも、ひとつのアクションになるかもしれない。何もなかったら、お茶するだけでもいいし。

山脇:そうそう。ただの雑談になってもOKなんですよ。雑談は平和の象徴なので。

犬山:自分がPTA役員になったら、それを提案してみるとか。

山脇:うん、PTA活動が活発な学校っていうのは、とにかく平和ですよ。子どもが明るい。友達のお父さんが会長をやっていたり、お父さんたちが学校の花壇の手入れをしていたり。それだけ大人の目があることになるので。

犬山:PTAって、働く親からすると、うわ、めんどくさい! って思っちゃうイメージなんですけど。子どもを守るっていう気持ちだったら、私もがんばれそうな気がする(笑)。

山脇:気になる子が、自分の子どもの同級生とか知っている子だったら、チャンスがあったときに、その子から直接話を聞くっていうのもいいと思う。例えば、いつも季節に合わない服を着ているとしても、それは本人のこだわりなのか、親がこれを着ろと言っているのか、服がないのか、理由はいろいろですよね。子どもって、わりと無防備に話してくれるので。そこから何か大きなことが出てきちゃったら、そこで学校の先生に言えばいいし。

 

通報までしなくても
地域の力で救われる子も必ずいる

山脇:気になる子どもの“お母さん”に声をかけてみることもできますよね。

犬山:その声のかけ方も、先生にぜひ教えていただきたくて。「あなた、虐待してるでしょ?」っていうのは絶対にダメじゃないですか。いい声のかけ方って、ありますか?

山脇:まぁ、前提として、そのお母さんが話をしたがる人かどうか、っていう見極めが必要だけれど。「いやいや、放っておいてください」みたいな感じになっちゃう人だったら、やっぱり調査の段階から専門家が入らなきゃいけない。

でも、そうじゃなかったら、まずふつうに仲良くなって「子育て、大変だよね」っていう話からでいいと思うんですよ。この人は何を大変だと感じているのか、っていうことからだと思うんですよね。困っていることが分かれば、「何か手伝えることがあったら、手伝うよ」って言える。

世の中には通報しなきゃいけない人もいるけど、地域の仲間同士のサポートで助かる親、救われる子どもも絶対にいるんです。地域に期待できるのは、そっちでしょうね。どうやって発見して、どうやって手伝ってあげるか、という感じ。「ぜひお願い」と言う人も、きっといると思うので。

 

Text:Keiko Ishizuka

 

PROFILE

山脇 由貴子 Yukiko Yamawaki
女性の生き方アドバイザー。家族問題カウンセラー。 東京都に心理職として入都し、都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。2015年に退職後、「山脇由貴子心理オフィス」を立ち上げ、現職。『教室の悪魔』(ポプラ社)、『告発 児童相談所が子供を殺す』(文春新書)、『思春期の処方せん』(海竜社)など。

 

PROFILE

犬山紙子 Kamiko Inuyama
1981年生まれ。コラムニスト、イラストエッセイスト。著書に『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)、『地雷手帖嫌われ女子50の秘密』(文春文庫)、『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)ほか多数。
2017年に女児を出産し、育児体験者への取材記録や自身の出産体験記を収録した『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)を刊行。現在は「SPA!」「anan」「steady.」「文學界」「読売新聞」などで連載中。

 

▼第1回はこちら

▼第3回はこちら

 

ご感想や応援メッセージ

掲載作品に対するご感想や応援メッセージが、こちらの送信フォームよりお送りいただけます。

なお感想以外のご質問、ご意見、ご要望、苦情などは、このフォームからお送りいただいても返信、対応ができかねますので、あらかじめご了承ください。

メッセージ送信にあたり、当社の個人情報保護方針をご確認ください。
講談社プライバシーポリシー

人気記事

This article is a sponsored article by
''.