ルノアール兄弟の『バブバブスナック バブンスキー〜ぼんこママがのぞく赤ちゃんの世界〜』の発売を記念して、旧知の仲でもある片桐仁さんと対談が実現! 子育てトークも一筋縄ではいかないようで、奥さんが聞いたら確実に激怒……(笑)。父親のちょっと正直すぎる本音をこっそり覗いてみましょう。

画像1: ルノアール兄弟×片桐仁
父親の正直すぎる本音とは?

片桐:ルノアール兄弟の漫画は初期から読んでますよ。

上田:いつもありがとうございます。

左近:短編集『おれは魔物とくらしてる』では帯にも登場していただいて。

片桐:ルノアール兄弟といえば、デビューからずっと童貞パワーを原動力にしてきたみたいなところがあったわけじゃない。

左近:そういう漫画ばっかり描いてました。

上田:主人公は基本、童貞でした。

片桐:言わずもがな童貞。それがルノアール兄弟でしょ。おれはそこがすごい好きだったの。サブカルチャーが過ぎるっていうね。

左近:過ぎてますかね?

片桐:作画の上田なんて、もともと芸人だったわけですから。

上田:ちょっとだけやってました。

片桐:俺たち、事務所が同じだったんだもん。なんていうコンビだったっけ?

上田:ブロウアップっていう……。恥ずかしい。

片桐:でもここ何年かは女の人が主人公の漫画を描くようになったんだよね。『少女聖典べスケ・デス・ケベス』とか。

左近:あれは女子中学生が主人公です。

片桐:しかも可愛い女子中学生。そして、とうとう育児漫画ですか。

左近:一応、育児漫画ってことになりますかね。

片桐:上田がお父さんになったんだよね。いま子ども何歳?

上田:二人いまして、上が4歳、下が0歳。二人とも女の子です。片桐さんのところは息子さんですよね。

片桐:うちは二人とも男。13歳と6歳。

上田:そんなに大きくなりましたか。

片桐:なったね〜。あっという間に。でも上田がお父さんになったから、てっきり主人公は育児をするお父さんかと思いきや、お母さんが主人公なんだよね。しかも冒頭からいきなり「母乳出てこいやああああっ!!!」って。どうしたどうした!? って思ったよ(笑)。

左近:最初はお母さんが主人公じゃなかったんですよ。いま連載している「ベビモフ」の前に、「BABY!」という子育て世代に向けたサイトがあって、その立ち上げのときに連載の話をいただいたんです。編集の方からは「赤ちゃん漫画にこだわらなくてもいいですよ」と言われていて。

片桐:「BABY!」なのに赤ちゃんじゃなくていいの?

左近:「育てる」というテーマであれば大丈夫と。

片桐:ってことは、最初はまさか……。

左近:童貞を育てる漫画でした。

片桐:やっぱり!

左近:平安時代の童貞が現代にタイムスリップしてきたっていう。天才歌人なんですけど、そういう経験は一切ない。

片桐:恋の歌は上手に詠むのに童貞なんだ。それは、誰が育てるの?

左近:OLというか……現代の若い女性ですね。

片桐:その二人が恋に落ちるのか!? みたいな。

左近:そういう感じです。

上田:で、その方向で1回描いたんですよ。

左近:でもそれを編集の方に見せたら「BABY!感がないですね」と言われまして。

片桐:全然ないよ! それでいいわけない!

左近:そこで急きょ路線を変更して、やっぱり赤ちゃんを育てようってことで、いまの形になりました。

片桐:お父さんじゃなくて、お母さんを主人公にしたのはなんで?

左近:媒体的に女性読者が多いので……。

片桐:単純!

上田:あと、こんなこと言ったらあれですけど、誤解を恐れず言うなら、子育て中の女性って、かなり普通の状態じゃないというか。うちの妻を見ていても思うんですけど、「あれ!?別人になった!?」って思うくらいのことが多くて。もちろん必死だからなんですけど。

片桐:確かにわかるな。

上田:その一生懸命さとかが、実は童貞にも通じるんじゃないかと思って。そう思ったら、アイデアが湧いてきました。

片桐:そういうことなのか〜。

上田:旦那だから感じるのかもですが、慣れないことが多くて手助けが足りないから、「すべて敵」みたいな状態なんじゃないかと思ってました。

片桐:一人目のときは特にそうかもね。旦那も全然役に立たないことが多いし。

左近:ほかに共通点として、しいて言えば、男を痛めつける視点で描いているのが、童貞ものの作品と似てますね。

 

父親のほうもテンパっちゃう
何かしてあげたいのに全部ダメ

左近:片桐さんのところは、奥さんどんな感じでしたか?

片桐:長男が生まれたばっかりのときに、ちょうど舞台の公演があって、何ヶ月か地方にいる時期があったの。だから一緒にはいられなくて、よく「なんで全然電話もしてこないの!」「電話くらいできるでしょ!」って怒られてた。それで舞台の合間、昼の3時くらいに電話すると「なんでこんな時間に電話してくるの!」って怒られてた。

上田:そういう感じ、わかります。

片桐:3時間おきに起きるし、どうやっても泣き止まないし、母乳がうまく出ないことで自分を責めたり。完璧なお母さんをやろうとしているわけではないんだけど、自分が産んだのにあまりにも思いが通じないというか、コントロールできないことに戸惑ってたんだなって思う。

上田:うちも生まれたばかりのときは相当辛そうでした。

片桐:お母さんはずっと大変なんだよ。うちなんて子どもが中学生になっても、ずっと怒ってるよ(笑)。

左近:そこは終わらないんですね。

片桐:漫画は家で描いてるんでしょ?

上田:仕事場を借りてる時期もあったんですけど、いまは家ですね。

片桐:自宅で仕事って難しくない?

上田:下の子は0歳なので、常に泣いてますね。仕事部屋はありますけど、あまりにも泣き続けていると、聞こえているのに無視できないなって思って、見に行きます。

片桐:上田は、どういうときに怒られるの?

上田:いや、もうなんで怒られたか覚えてないです。常に怒られてるので。とにかく気が立ってるんですよね。なんていうか、誰が近づいても「フーッ!」ってやる猫いるじゃないですか。常にあの状態に僕には見えるというか。

片桐:父親のこと敵だと思ってる気は確かにする(笑)。

上田:そういう研究も実際あるらしいです。本当に、周囲が敵だと思っちゃうっていうのを読みました。

片桐:子どもは自分の一部で、それを守らなくちゃいけない。そこに父親はいらないっていうことなのかもな。

上田:そこが難しいですよね。

片桐:父親のほうもテンパっちゃうんだよね。当然、何かしてあげたいって思ってるんだけど、全部ダメなの。

上田:それこそ生まれたばかりのときなんかは、正直可愛いのかすらよくわかんなかったです。戸惑いの方が大きくて。しばらく経ってから、ようやくすごく可愛いなって思えるようになりました。

片桐:こういう話って、子どもがいない男には一切通じないんだよ。まったくの別世界というか、知らない世界の話って受け取られる。

左近:うちは子どもがいないので、ストーリーを考えるときは、上田からまず話を聞いて膨らませるんですけど、確かに知らないことばっかりです。

 

子どもはひたすらボケまくる
親はひたすらツッコミ続ける、そんな感覚

片桐:この漫画では、母乳が出なくてお母さんが道場に通っているシーンがあったけど、上田の家でもそうだったの?

上田:塾みたいなところにも通っていました。

片桐:乳林寺?

左近:それは漫画だけです(笑)。

上田:板の看板に、なんとか式乳房管理なんとかっていう看板が掲げてあって、のれん分けみたいに流派があるようで。なんかすごいな……って。ものすごく大変なことなんだなって、思い知らされたというか。

左近:片桐さんは出産立ち会ったんですか?

片桐:長男のときは立ち会った。朝の5時くらいに痛い痛いって病院に行って、着いたんだけど子宮口が開いてないとかで、とりあえずお風呂入れって言われて、入ろうとするんだけど足が持ち上がらなくて入れないの。バスタブをまたげないんだよね。それで片足だけ真っ赤っかになりながら、お風呂は諦めた。夏の暑い日でさ。冷房はよくないからって、めっちゃ暑い部屋で。二人とも汗ダラダラだったよ。さすれって言われてさすると「そこじゃない!」って怒られて。あまりの痛さにゲボー! って吐くし。痛みを訴える声が人間の声じゃないっていうのも知った。ぐぎゃあああっていうさ。初めて聞く声だったな。

左近:すごい光景ですね……。

片桐:ほんとだよ。その日は夕方の4時から舞台の本番だったから、その間抜けたんだけど、戻ってきてもまだ産まれてなくて。さすがに嫁さんも限界で「もうやだ」「もう産まない」とか言ってるし。結局20何時間後に産まれた。

上田:うちは里帰り出産で、産まれそうだっていうので東京から向かったんですけど、その途中で産まれちゃいました。

片桐:産まれたら産まれたで、しばらくすると夜中にさ、真っ暗な中、子どもが徘徊してて。だぁだぁ……だぁだぁ……って声が暗闇から毎晩聞こえてくるんだよ。

上田:暗い中でそのへんに落ちてるもの口に入れたりしたら大変ですね。

片桐:そのころは長男がもう小学生になってたから、プロモデルとか作りはじめていて。部品もそうだし、カッターとかもあるのよ。

左近:危険すぎますね。

片桐:カッターくわえてるときあったもん。ヒヤヒヤした(笑)。

左近:そういうのって、こんなに笑って話せるもんなんですか?

片桐:いまはね。でもそのときは超必死だよ。

上田:芸人さんが小道具でボケる「モノボケ」ってあるじゃないですか。のんきに言えば、もうずっとあの状態えした(笑)。子どもは、ひたすらボケまくる。

片桐:生きることが大喜利だよね(笑)。

上田:親はそれにひたすらツッコミを入れていくんですよね。「なんでだよ!」とか「よしなさい!」みたいに。

片桐:なんでも舐めるしね。

上田:なんでも舐める意味が本当にわからないです。ボケと思うと心にゆとりができるけど。

片桐:すぐ病気になるし。すぐいなくなるし。ディズニーシーでいなくなったときがあって。園内中を探し回ったのにいなくて、嫁さん半泣きになっちゃって。そうしたら、いなくなったお店のレジの内側にいて、お姉さんと楽しそうにしゃべってるの。なんなんだよ!

上田:男の子だからですかね。うちはあんまり迷子にはならないです。そのぶん、女の子だからなのか、けっこうませていて、母親の真似をして僕のことを怒ってきます。

左近:どんなことで怒られるの?

上田:お風呂にいれたとき、かぶれたりしちゃいけないと思って体を隅々までちゃんと洗うと「痛ったい!」とかって言われて。

片桐:それはイヤだな〜。昔の嫌な記憶、呼び起こすな〜(笑)。

上田:しかも、すっごい嫌そうな顔して言うんです。あれがけっこう傷つくんですよね。

 

子育てと距離が遠い
父親も、現実にはいる

画像: 子育てと距離が遠い 父親も、現実にはいる

片桐:オムツ替えもしてる?

上田:やってます。

片桐:父親のなかには「おれウンチNG」とかって言っちゃう人もいるらしいよ。

上田:NGって……ありなんですか!?

片桐:すごいよね。ほかのお父さんとの交流はある?

上田:保育園の集まりとかで多少は。

片桐:普段あまり交流することがないお仕事をしてる方々との交流って、不思議な気分になる。

上田:たしかに。話題に困って、緊張しますよね。

片桐:おれたちの職業はとくに、普段限られた仕事の人ばっかりがまわりにいるじゃん。会社にも行ってないわけだし。

上田:職業を聞かれて「漫画家です」って言うの、ちょっと恥ずかしいです。

片桐:「え? 漫画家!?」って驚かれるでしょ。そして当然「どんな漫画描いてるんですか?」って聞かれる。

左近:『大童貞』とは言いづらいね(笑)。

上田:漫画家っていうと普通に有名だと思われるんですよね。「ジャンプで読めますか?」みたいな。

左近:ジャンプでは読めないね。

上田:あと話題といえば、子どもの話というよりは、奥さんに怒られる話のほうが多い気がします。

片桐:そこは共通だよね。でもさ、たまにめっちゃ亭主関白の人がいてびっくりすることない? さっきのウンチNGどころか、オールNG! みたいな。

左近:オールNGってどういうことですか……?

片桐:子育て一切しないってこと。それを平気で言っちゃうんだよ。

左近:……いろんな人がいるんですよね。

片桐:「子どもが寝るまで帰ってこないで」って言われてる人もいた。どんなに早く仕事が終わっても、奥さんから子どもが寝たっていう連絡が来るまで帰れないんだって。

上田:そういうパターンもあるんですか。

片桐:子どもの育て方は本当に家庭によって違うし、もちろん子どもがいなくたって全然いいんだけど、せめて “子育て” というのが実際どういうものかは、大人全員に知っていて良い気がする。実際やってみたら、こんな大変なことないじゃん。

上田:子どもがいなかったころとは、まったく違う世界です。

片桐:でも、どんなに文句を言って愚痴っていても、子どもがいて幸せだと感じてるのは間違いない。あんな可愛いもんないよね。

上田:これは素晴らしいものだっていうのが、脳にダイレクトで来ますよね。

 

母親は親方みたいな存在
絶対に敵わない逆らえない

画像: 母親は親方みたいな存在 絶対に敵わない逆らえない

片桐:左近は、父親になった相方のことをどう見てるの?

左近:とにかく怒られまくっているなって(笑)。正解がわからなくて、おろおろしてるように感じますね。

上田:毎日父親としてやってることって、「魔界村」とかの、いわゆる “覚えゲー” と同じな気がするんですよね。パターンを知らないとゲームオーバーになるのは決まっていて。次に死なないためには、死んで覚えるしかないっていう。

片桐:超いい例え(笑)! 子育ては覚えゲーだ!

上田:理屈じゃないんです。覚えて対処するしかない。あとは、子どものことをずっと見ているのって、車の運転とかに近いのかなって思います。とくに何も起こらない道でも、地味にずーっと負荷がかかっているような状態。絶対に気は抜いちゃいけないっていう。

片桐:だから母親は大変なんだよね。

上田:もしくは、レールの上に風船が置いてあって、汽車が近づいてきたらその風船をひょいっと持ち上げるゲームあるじゃないですか。あのゲームをずっとやってるみたいな。

片桐:それ絵にしてほしいな〜。

左近:そのたとえは怒られそうですけど……。

上田:子どもを見るの代わってほしいと言われるんですけど、締め切りもあるし、原稿を描いてると、つい集中しちゃうんですよね。

片桐:仕事に集中するって、本来はいいことだけど、子育て中はそうもいかないよね。

上田:「なんで目離すの!」って怒られます。

片桐:抱っこしてるとさ、赤ちゃんってあったかいでしょ。だからいつの間にか寝ちゃうんだよね。

左近:片桐さんが寝ちゃうんですか? 赤ちゃん抱っこしたまま?

片桐:そう、抱っこしたまま。

左近:そういうもんなの?

上田:いや、赤ちゃん抱っこしてるとあったかいから寝ちゃうっていうのは聞いたことない。

片桐:「大切にして!」「自分の子どもでしょ!」とはよく言われるな〜。

左近:逆に、奥さんからほめられるようなところはないんですか?

片桐:ない。

左近:あれなら私より上手にできるねとか。

片桐:ひとつもない。

上田:僕もひとつもないですね。

左近:もはや、ほめられたいとも思わない?

片桐:ほめられたい。ひとつでもいいからほめられたい。ムチがあまりに強すぎるから、ちょっとでもアメがほしい。でも出来ないの。

上田:母親って、もはや親方みたいな存在ですよね。絶対に敵わないし、逆らえない。

片桐:奥さんのほうにしても、上田のことを見る目は変わってるはずだもんね。

上田:それはありますね。子どもが生まれる前は、多少なりとも僕に可愛げみたいなものを感じてくれていたと思うんですよ。結婚までしているわけですから。それが、子どもという最高にして最強の超大手 “可愛げ” が新規オープンしたので、僕みたいな小さい個人商店は一瞬で潰れますよね。

片桐:おじさんの可愛げが娘に勝てるわけない。

上田:ほんとですよ。

片桐:このマンガは、子育て中の人に限らず、いろんな人に読んでほしいよね。大人になってからどんなに子育てとは関係のない人生を送っていても、自分が子どものころは絶対に “子育て” してもらってたわけなんだから。

上田:そう思います。

左近:上田やいろんな人たちから話を聞いて、とりあえず母親にストレスがかかりまくっているというのはよくわかったので、漫画でそれを描くときにあまりに不幸そうに見えるのはやめようって思っているんです。たくさんの苦労はあったけど、いまとなっては笑えるみたいな気持ちで読んでくれたらいいなと。

片桐:そうだね。いや〜、ルノアール兄弟からそんな言葉を聞くとは思わなかったよ。

 

Photo:Naoto Otsubo Text & Interview:Ryuji Ogura

 

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