画像: #10 みうらじゅんさん

今月の人。

画像: 今月の人。

(イラストレーター)
みうらじゅんさん

1958年、京都府生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以降、漫画やイラストのみならず、エッセイスト、ミュージシャンなど、多岐にわたる分野で活躍を続けている。
 
’97年には造語“マイブーム”で新語・流行語大賞、2005年日本映画批評家大賞功労賞を受賞。今年はみうらじゅん生誕60年を記念し、川崎市市民ミュージアムにて、“MJ’s FES みうらじゅんフェス マイブームの全貌展 SINCE1958”が開催された。
 
著書に『アイデン&ティティ』、『青春ノイローゼ』、『色即ぜねれいしょん』、『アウトドア般若心経』、『十五歳』、『マイ仏教』、『セックス・ドリンク・ロックンロール!』、『キャラ立ち民俗学』など多数。共著に『見仏記』シリーズ、『D.T.』などがある。

 

独特の不思議な世界観!
大人でも子どもでも描けない
絵のすばらしさに驚いた

『ゴムあたまポンたろう』

画像1: 『ゴムあたまポンたろう』

作:長新太 ¥1300/童心社

山にポンとぶつかって、ボールのように空を飛ぶゴムあたまポンたろう。ゴムでできた頭は、どんなものにあたってもいたくありません。山にポン! とぶつかって、飛んで行った先には、バットのような角をはやした大男が昼寝をしていて……。バラの花畑や、おばけの町、ジャングル、サバンナなど、世界を旅するポンたろうの不思議な世界一周の旅。

「頭がゴムでできている男の子が、ポーン、ポーンといろんなところにぶつかりながら飛んでいくだけという、その世界観がすごい! タイトルになっている『ゴムあたまポンたろう』っていう名前からして、もうそれだけで十分おかしいんですよね。この絵本はうちの子供もすごくおもしろがって読んでいました。不思議な世界なのに、長さんの絵って、なぜか実際に見たことがあるような気になるんですよね」

画像2: 『ゴムあたまポンたろう』

 

教育的な匂いをまったく感じさせない
物の見方のスケールの大きさがすごい

“マイブーム” や “ゆるキャラ” といった造語の命名者であり、長きにわたる仏像マニアとして、現在の “仏像ブーム” を牽引してきたみうらじゅんさん。小学1年生から “怪獣スクラップ・ブック“ を制作してきた彼にとって、幼少期に愛読していた本といえば、ずばり “怪獣の写真集” だった。

「うちの両親には絵本を僕に与えて教育しようという気がなかったのか、家に絵本がなかったんですよね。だから自分の中では『怪獣画報』と『怪獣図鑑』が “絵本” だったんですよ。秋田書店から出ていた本で、『怪獣図鑑』は幼い頃の浩宮様がデパートで買われたというニュースで話題になりました(笑)。『怪獣画報』のほうは今、復刻版が出ていますね」

みうらさんが絵本を読むようになったのは、美大を目指していた浪人生の頃。当時は「絵本作家になりたい」と思っていたという。

「浪人時代は勉強もしないで絵本を描いていて、持ち込みしようかと思っていたんですよ。でも、僕が描いていたものって、結局、大人目線の話ばっかりだったんですよね。何かテーマがあって、それを子どもっぽく落とし込んでいるという感じで。途中で、そういう話を作っている自分に対して、なんか違うなあと思って、やめちゃったんですけど」

そんなとき、たまたま出会ったのが、長新太さんの絵本だった。力強く独特なタッチの絵と、奇想天外なストーリー。ナンセンスな世界のおもしろさに、胸をわしづかみにされた。

「長さんの絵本には、すごく驚きましたね。ストーリーは、起承転結のうちの起承転まではあるんだけど、結がないっていう(笑)。結局、大人の目線で描いたものって、起承転結の結のところを念頭において描き始めるから、つまんないんですよ。大人が子どもに教えてやろうっていう高飛車な態度が出ていてね。

その点、長さんの絵本は、子ども目線っていうか、長さんの目線だけの話で。教育的とか、今の社会へのアンチテーゼとか、もうまったく関係なくて。物の見方のスケールがでかいんですよ。長さん、もうお亡くなりになりましたけど、膨大な数の作品が残っていて、『ゴムあたまポンたろう』は3年くらい前に買った絵本です。僕が子どもの頃に読んでいたら、絶対にすごく好きになっていただろうなって思いますね」

 

子ども本人のセレクトに関しては
あえて干渉せず、ほったらかしがいい

「絵本って、字のとおり “絵の本” だから。ちっちゃい頃は特に、どんな絵が好きかってことだと思うんですよね。子どもが絵のおもしろさを楽しむことがそもそもの絵本の良さでしょ。すごく精密に描いている絵本とかも、やっぱりウケるんですよ。また、自分の好みと子どもの好みが違うのも不思議だなぁと(笑)

小さい子どもには、ウンコとかチンチンとかが出てくる話がウケるんですよ、やっぱり(笑)。それだけですごく嬉しそうにしている。自分も当然そっちのほうが好きなんで。親になったからといって、いきなり教育的なものを与える自分って嫌だから、そこはほったらかしにしてていんじゃないかと。本屋に行って、子ども本人が好きなものを買う、っていうのが一番いいような気がするんですよね」

自分が好きだからといって、必ずしも子どもが同じものを好きになるとはかぎらない。だから、子どもたちが絵本を選ぶときも、親のほうから積極的に勧めることはしないというのが、みうらさんのスタンス。

「でも、子どもに自由に選ばせると、はじめの頃は、テレビでやってるアニメとかの絵本とかになるんですよ。今だったら、ゲームの攻略本がほしいでしょ。親は『こっちのほうがいい』って言いたくなるかもしれないけど、ほっとけばいいんじゃないかなって思いますね。僕自身もそうだったけど、親がちょっと止めたくなるようなものが、やっぱり子どもは好きなんだよね。」

 

毒のあるものに免疫がなさすぎると
大人になってから困るんじゃないかな

大人が100%自信を持って「見なさい」と子どもに言えないものには、もちろんそれなりに理由がある。それでも「子どもの頃に出会う “毒” には意味がある」と、みうらさんは話す。

「今とは時代が違って、僕らが子どもだった頃は、怖いものとか、エッチなものとか、相当危険なものが少年誌に載っていたんですよ。以前、うちの子に『パパは昔、女の子のスカートをめくっていたんだよ』って話したら、『変態じゃない!』って言われて(苦笑)。スカートめくりは、当時『ハレンチ学園』っていうマンガの影響で、全国の小学生の間で流行っていたことなんだけど、今はセクハラになっちゃうからね(笑)。

とにかく昔はいろんな “毒” がいっぱいあって、それをどう摂取して、どう止めるかは、自分が決めなきゃいけないことだったんですよね。今みたいに、いいことも悪いことも親が決めてなかったから。

でもね、自分で決めるものがあったほうがいいんだよね。衝撃を受けるかもしれないけど、子どもの頃の衝撃って、もうけもんなんですよ。一生残るものだし、僕の場合、それが糧になってモノを作っているから。トラウマって、イコール “個性” なんです」

 

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チョビひげの生えたみみずのオッサンがペンキと絵の具だらけの世界を救う!?

『みみずのオッサン』

画像: チョビひげの生えたみみずのオッサンがペンキと絵の具だらけの世界を救う!?

作:長新太 ¥1300/童心社

“オッサン” という名前のみみずが散歩に出かけると、ドシーン! と何かが落ちてきた。ヌルヌル ベトベト ベタベタベタ~。大変! ペンキや絵の具やクレヨンを作る工場が爆発して、町中はどこもかしこも色だらけに! すると、みみずのオッサンが、いろんな色をもぐもぐもぐもぐ食べていって……。目にまぶしい鮮やかな色彩と、味わいのある手書きの文字で、長新太らしい不思議な世界へ誘うユーモア絵本。

「長さんの絵って、子どもが描いた絵のように見えて、決して子どもには描けない。“ヘタウマ” じゃなくて “ウマウマ” の絵。それでいて、子どもが親しみを感じる絵なんですよ。長さんはいろんな作風を模索しながら、このすばらしい絵に到達されたんだと思うとグッときますね」

 

自分の感覚がぐんぐん広がっていく
素敵な絵と印象的な文のコラボレーション

『どんなかんじかなあ』

画像1: 自分の感覚がぐんぐん広がっていく 素敵な絵と印象的な文のコラボレーション

文:中山千夏 絵:和田誠 ¥1500/自由国民社

友達のまりちゃんは目が見えない。それで考えたんだ。「見えない」って、どんな感じかなあって。試しに、しばらく目をつぶってみると……なんてたくさんの音が聞こえるんだろう! 好奇心いっぱいの主人公の男の子と共に、いろいろな立場の人の感覚を想像し、体感するという稀有な読書体験。幼い子どもから大人まで、読む人、読む年代によって、さまざまな受け取り方ができる深い一冊。

画像2: 自分の感覚がぐんぐん広がっていく 素敵な絵と印象的な文のコラボレーション

「和田誠さんはスゴイでしょ。和田さんが手がけた絵本は初期のものから最近のものまで、たくさん持っています。和田さんの独特の色使いが好きで、僕自身、すごく影響を受けた方です」

 

センスのある絵はもちろん
言葉に対する感性の鋭さが炸裂!

『ことばのこばこ』

画像: センスのある絵はもちろん 言葉に対する感性の鋭さが炸裂!

作:和田誠 ¥1748/瑞雲舎

しりとり、句読点遊び、回文、かぞえうた、なぞかけなど、18種類の言葉遊びを軽妙なタッチのイラストで楽しむ大型絵本。イラストだけでなく、すべて手で描かれた文字もまた、ひとつひとつの “絵” になっているところがポイント。目で絵を見ながら、声に出して文を読むことで、日本語という言葉のおもしろさ、楽しさが何倍にもなって伝わってくる。

「一時期、和田さんの絵が好きなあまり、自分では気がつかなかったけど、どうやら絵を描くときに和田さんのタッチをすごく真似ていたんですよね。僕、ある編集部で『和田誠っていう名前に変えれば?』って言われたくらい、当時の絵はそっくりだったみたいです(笑)。嬉しかったんですけどね、本当は。」

 

Illustration:Yuka Hiiragi Text:Keiko Ishizuka Composition:Shiho Kodama

 

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