今月の人。

画像: 今月の人。

(漫画家)
瀧波ユカリさん

1980年、北海道生まれ。2004年に月刊アフタヌーンの四季賞冬のコンテストにおいて、4コマ漫画『臨死!! 江古田ちゃん』が四季大賞を受賞し、漫画家デビューが決定。
 
江古田在住の独身女性の日常生活を描いた本作は、月刊アフタヌーン連載中から女性読者の圧倒的な共感を呼び、2011年にドラマ化、アニメ化された。その他の著書に、育児エッセイ『はるまき日記』、対談本『女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態』、コミック『あさはかな夢みし』など多数。
 
2018年2月にエッセイ集『30と40のあいだ』、3月には“母の死”を真正面から描いたコミックエッセイ『ありがとうって言えたなら』を出版。現在は、講談社Kissにて恋愛コメディ『モトカレマニア』を連載中。札幌在住。

 

おもしろい視点とユーモアで
常識をひっくり返してくれる。
子どものときに読みたかった!

『正しい暮し方読本』

画像1: 『正しい暮し方読本』

作:五味太郎 ¥1500/福音館書店

“正しいくらし” って、どんなくらし? 正しい買い物のしかた、正しいテレビの見方、正しい本の読み方、正しいゴミの分け方、正しいケンカのしかた……33項目におよぶ日々のくらしを通して物の見方や考え方を楽しんでいく、独創的で画期的な絵本。

「ページを開くと、子どもが想像する “正しい” とは全然違う “正しい“ がたくさん載っていて。これはぜひ子どもと一緒に読みたいなと思いました。

必ずしも “いい子” じゃなくていいとか、一般的な “正しさ” にこだわらなくていい、っていうことを楽しく学んでもらえるところが魅力ですね。もちろん大人が読んでも、すごくおもしろいです」

画像2: 『正しい暮し方読本』

 

子どもにはまだ分からないと
最初から決めつけなくていい

豊かな感受性と抜群のユーモアセンスで、世の中の大人のホンネを鮮やかに描写し、読者をクスッと笑わせたり、ドキリとさせたりしてくれる漫画家の瀧波ユカリさん。お気に入りの絵本には、ひねりのある個性的な一冊『正しい暮し方読本』を挙げてくれた。

「タイトルの “正しい” という言葉は、ふつうの “正しい” じゃないんだろうなというのは、読む前から何となく感じていました。

もともと私は、世間に合わせて『右へならえ』みたいなことを子どもに教えたくないタイプの親。でも、親だけがそういうことを言っても、子どもからの共感はなかなか得られないんですよね。その点、私と似た感じのことを、ユーモアを交えて表現している絵本があると、子どもにすごく伝わりやすくなるんです。

そういう意味で、これはとても “反社会的な部分がある絵本” だと思います。たとえば『正しいお箸のもち方』という項目では、お箸はどう持ってもかまわないんだよ、とズバッと言っている。箸を正しく持たなくてもいいっていうのは、世間では大きな声で言えないことなので、多くの親は読んでいてとまどう部分があるかもしれないんですけれど(笑)」

文章には漢字(振り仮名付き)も多く、幼い子どもがひとりで読むのは少々難しいかもしれないが、読み聞かせなら大丈夫。分からないところは、親が「こういうことなんだよ」と説明してあげてもいい。各ページ、コミックのようにコマを割って描かれた構成には、見ているだけでワクワクするような楽しさがいっぱいだ。

「この絵本を娘に初めて読み聞かせしたのは、小学校に入ってすぐの6歳のときですね。順番どおりに読むというより、夜寝る前にパッと開いたところを何ページか読むというスタイルで。

どのページも本当に見事なんですけれど、私自身は『正しい怪獣とのつきあい方』に深く共感しました。自分も漫画家として思っていることが、そのまま描いてあって。作者のちょっと冷めた視点がいいんですよね。子どもをなめていない、というのかな。

『こういうことは、まだ子どもには分からない』という考え方をまったくしていない人で。子どもにも伝わると思っているし、ちゃんと伝わるようにおもしろく描いているんです」

 

行き当たりばったりの選び方でも
いい絵本に出会えると嬉しくなる

瀧波さんにとって最初の本の記憶といえば、5歳の頃に読んだコミック『ドラえもん』と『ハレンチ学園』(!)。意外にも子どもが産まれるまで「絵本には縁がなかった」という。

「私は本に関しては、漫画から先に入っちゃったタイプ。親は本にあまり興味がなかったので、子どもが読むものはまったく自由でした。だから、私は絵本の予備知識が全然ないまま、親になってしまったんですよ。

いろんな人が思い出の絵本を語る特集を見たり、友達が絵本にすごくくわしかったりすると、自分には何かが欠落しているんじゃないかっていう気がして……(笑)。そういう意味では絵本に対して憧れもありますね」

子ども時代の絵本への思い入れがないぶん、瀧波さんの絵本選びはインスピレーション重視。アマゾンで絵本の説明やレビューを読んだり、書店で実際に手にとってパラパラと中身を見たりして、直感的に「よさそうだな」と思ったものを購入する。

「あと、今住んでいる札幌では、地下街でよく古本イベントが開催されていて、子どもの絵本もたくさん置いてあったりするんです。

なので、街を歩いていて、古本市をやっていたら、パッと見て、じゃあ、1冊買っていこうかという感じ。それで気に入った作家さんがいたら、後でその方の他の絵本を買ってみることもありますね」

 

親の絵本の読み聞かせから
ひとりで楽しむ読書への移行

娘さんはこの春から小学2年生。幼稚園の頃は「絵本も親と一緒じゃないと読まないという感じだった」のに、小学校に入り、自分で本を読めるようになってからは、すっかり読書好きなお子さんへと成長した。

「きっかけは小学1年生のときに、角野栄子さんの『小さなおばけ』シリーズを大量に読んだことですね。字が大きいけれど、絵本と字の本の中間みたいな児童書なので、子どもが一人で本1冊を読み切ったという感覚がある。それではずみがついたという感じです」

他にも、娘さんが最近、夢中になって読んでいるのが、子どもの知識欲を満たしてくれる『なぜ? どうして? 』シリーズ(高橋書店刊)や『学習漫画 世界の伝記』シリーズ(集英社刊)。

「今、娘の読む本は、けっこう夫のリサーチによるものがメインですね。夫は熱心に調べては、『こういうのもあるよ』っていうふうに選択肢を出すのが好きで。

これがいけるなら、これもいけるだろうと、さりげなく、どんどん上にのせていく感じです。子どもの向上心をうまく刺激しているなぁと思います(笑)。

子どもって、みんなが知っている名作にはまるかというと、案外そうでもなかったりして、よく分からないですよね。

私も買ってくると、子どもが『おもしろい!』って言うときと、『これ全然ダメだった……』と言うときがあります。だから、ときには少々失敗してもいいので、子どもが今、何に興味があるのかをよく見て、その好奇心をうまく引き出せるような本を与えていけるといいなと思っています」

 

[ 瀧波さん、これもオススメ。 ]

世界各国のお茶の文化にワクワク
家族で何度読んでも楽しめる一冊

『おちゃのじかん』

画像1: 『おちゃのじかん』

作・絵:土橋とし子 ¥1300/佼成出版社

家族や友達同士で、お茶を飲みながら、楽しくおしゃべりをする。そんな何気ない日常のひとときの幸せを改めて感じさせてくれる “お茶” をテーマにした絵本。アルゼンチンのマテ茶、イギリスのアフタヌーン・ティー、モロッコのミントティーetc。世界各国のお茶の作法や道具、お茶請けなども詳しく紹介。

画像2: 『おちゃのじかん』

「ストーリーものではなく、ちょっと知識本っぽい一冊です。この絵本を読んで、娘がお茶の飲み方にすごく興味を持つようになりました。子どもとしては、写真で見るよりも絵のほうが、イメージが入ってきやすいみたいです。

私の姉が大阪に住んでいて、何度か行っているので、この絵本に登場する一家の会話が関西弁というのも楽しいポイントですね」

 

イマジネーションを刺激されて
思わずチキンスープが食べたくなる!

『チキンスープ・ライスいり ‐12のつきのほん‐』

画像: 『チキンスープ・ライスいり ‐12のつきのほん‐』

作:モーリス・センダック 訳:じんぐうてるお ¥800/冨山房

1月から12月まで、お米をいれたチキンスープはいつだって最高においしい! 『かいじゅうたちのいるところ』で知られる世界的絵本作家モーリス・センダックが、1年間のそれぞれの月の楽しみ方と、季節の移り変わりをリズミカルな文章と愉快な絵で描く。

「とにかく言語化できないシュールなおもしろさ(笑)。この絵本にも、子どもの固定観念をひっくり返してくれるようなところがあって。

全体として、特に大きな起承転結があるわけじゃなく、ひとつひとつが荒唐無稽な話の繰り返しなんですが、何ともいえない魅力にあふれています。娘も気に入っていて、いつも楽しそうに読み聞かせを聞いていました」

 

古典落語の音のリズムが絶妙で
声に出して読むと気持ちがいい

『寿限無』

画像: 古典落語の音のリズムが絶妙で 声に出して読むと気持ちがいい

文:齋藤孝 絵:工藤ノリコ ¥1200/ほるぷ出版

あるところに、それはそれは長い名前の男の子がおりました。その子の名前は「寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の、水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ……」誰もが知っている落語『寿限無』が楽しい絵本になって登場。

「読み聞かせって、絵と音で楽しむようなところがありますよね。『寿限無』は音のリズムがいいので、まさに読み聞かせにぴったり。

娘が1歳の頃から家にあって、意味も分からないうちから読み聞かせをしていました。それはたぶん親が読んでいて気持ちがよかったからだと思います(笑)。読むほうも聞くほうも満たされるというのが、すごくいいですね」

 

Illustration:Yuka Hiiragi Text:Keiko Ishizuka Composition:Shiho Kodama

 

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