画像: #11「パパともういちど、けっこんして!」と言われて悩む

モテる才能を持つ次男

高校生の次男(私が産んだ下の子)に、最近カノジョができました。我が家は親も、子どもたちも、非モテ路線の人たちばかりですが、次男は素直すぎる性格(好意がダダ漏れなのです)が功を奏し、高校生にして早くも2人目のカノジョをゲット(それが普通……!?)。しかし、子どもにカノジョができると毎回「よかったねぇ!」と思う一方で、我が家のことを考え「大丈夫かな?」と、内心ドキドキします。

今の私の一番の心配事は、なんといっても“ やがて来たるべき、子どもたちの結婚問題 ”です。まだ早すぎる心配だと分かってはいても、家と家の価値観がぶつかり合う “結婚” という状況になったら、我が家はどう見られるでしょう。相手方にとって想定外過ぎるだろうLGBTの家庭が、どう受け止められるか?それを考えると気が重くなります。

「息子の結婚相手が、“娘を嫁にやる” なんて思っている家庭の娘さんだったらどうしよう……」と、考えるだけで暗澹たる気持ちになります。

そこで私は、それとなく次男に探りを入れてみました。すると、どうやらカノジョの家庭は、多様性に寛大そうだと分かり、ホッと胸をなでおろしました。将来の心配は早すぎるとしても、こちらがLGBTの家庭であることを知って「付き合うなんぞ許さん!」なんてことになったら大変です。

そんな私の心配をよそに、先日、次男がさらっと「カノジョにうちの家族のこと、話してきた」と言うではないですか! 「どんな風に説明したの?」と聞いてみたのですが、残念ながらそれは教えてもらえず……。ただ、カノジョの反応は「あ、そうなんだー」という、実にアッサリとしたものだったそうです。

その反応に安心しつつ、一方で次男の突然のカミングアウトには家族一同びっくりしました。というのも、次男はずっとLGBTに対して頑なで、我が家で最も強硬な態度をとっていたからです。

 

血縁がそんなに偉いのか(怒)!

そんな次男にまつわる思い出として、忘れられない出来事があります。もともと次男は体の弱い子で、小さい頃は入院や手術を繰り返していました。1歳にならないうちから頻繁に高熱を出し、検査入院をしても異常が見つからず(のちに器官異常が見つかり、手術をするのですが)、健康に不安を持っていたのです。

私といえば結婚生活がうまくいかず、絵に描いたような孤独な育児 “孤育て” が長期化し、子どもの具合が悪くなるたびに、長男と次男を抱えてタクシーで病院に駆け込むような状態。それが麻ちゃんと暮らし始め、一緒に救急病院に駆け込んでくれる人ができたことで、心の大きな支えになっていったのです。

そして次男が4歳になった頃、風邪をこじらせ、大きな病院まで連れて行くことになりました。ぐったりした次男に下された診断は「数値がよくないので、このまま入院です」というもの。麻ちゃんと暮らし始めて、初めての入院です。次男が私の抱っこから離れないので、麻ちゃんに入院手続きを頼み、病室で待っていたのですが、待てど暮らせど麻ちゃんが戻ってきません。

「変だなぁ」と思っていると、随分経って困り顔の麻ちゃんが帰ってきました。「どうしたの?」と聞くと、麻ちゃんは言いにくそうに口を開きました。「うーん。私じゃ入院手続き、ダメだって。血の繋がったお父さんか、お母さんじゃないといけないって。“お母さんは子どもの世話で手がふさがって、お父さんとは離婚してます” って言ったら、 “離婚したお父さんでもいいから、血縁の親を連れてきてください” って言われたよ」

この時、本当に脳天を打ち砕かれるようなショックを受けました。

「まさか断られるとは!」

同性のパートナーでは、子どもの入院手続きさえできなかったのです。

“同性のパートナーと子育てすることが、どういうことなのか?” を、私は初めて意識させられました。

当時は、元夫は養育費の支払いを拒んでいて、経済的な保証人としては問題がありましたし、長く会っていなかったので、次男の健康状態を知る由もありません。「連れ去りのことを、心配しているのか?」とも考えましたが、それなら元夫の方がよっぽど連れ去りの危険度が高い!「血縁がそんなに偉いのかー!!」と、私は怒り心頭です。

子どもが入院するタイミングで、ただでさえピリピリしている時に、「離婚したお父さんでもいいから、血縁の親を連れてきてください」は、正直こたえました。「1人で子どもを連れて病院に駆け込まなくてよくなったら、今度はコレ!?」。あの時の怒りは、12年経った今も忘れられません。

一方の麻ちゃんは、「今回は大病じゃなかったからいいけれど、もし緊急を要する場合だったらどうするんだろう」と、ゾッとしたそうです。万が一の事態が起こった時、麻ちゃんが1人で次男を病院に連れて行ったら、一体どうなるのでしょう?

ちなみに、このへんのルールは病院ごとに異なるようです。最近はLGBTの認知も浸透してきているので、少しずつでも良くなることに期待しています。

で、結局どうしたか……。今ほど図々しくなかった私は、病院に文句も言えず、ショックを受けている麻ちゃんを動揺させないように、怒りを押し殺し、何事も無かったかのようにやり過ごすのが精いっぱいでした。

 

麻ちゃんは静かに乗り越えた

麻ちゃんは、その後も次男の入院の度に付き添ってくれました。そうして麻ちゃんと次男も、長男の時のようにすんなり仲良くなる……かと思いきや、これがなりませんでした。

というのも私と元夫が離婚した時、次男はまだ2歳。小さすぎて父親と一緒に暮らした記憶も、私がなぜ離婚をしたのかも、理解するには幼すぎたのです。麻ちゃんと暮らし始めてからも、事あるごとに「はやくパパと、もういちどけっこんして!」と言い続けました。

「パパは、もうママとは暮らしたくないって、言ってるんだよ」とか、「ママは麻ちゃんが好きで、一緒に暮らすって決めたんだよ」と説明しても、次男は一歩も引きません。

だからといって、父親の代わりにやってきた麻ちゃんを恨む、ということもありませんでした。次男は長男のように人懐っこいタイプではなく、人見知りなところがあります。ですから、とりたてて仲が悪いわけではないのですが、そんなに懐かない、という具合です。

そんな次男をみて、麻ちゃんはとても複雑だったはず。娘(麻ちゃんの産んだ娘)との仲がうまくいかなかった私は、たびたび麻ちゃんや友だちに不満や愚痴をぶつけましたが、麻ちゃんは次男のことで騒ぎもせず、淡々としていました。そんな麻ちゃんをみて、私は「辛くないのかなぁ」と不思議でたまりませんでした。

そんな麻ちゃんがある時、ぼそりとこんなことを言いました。「○○(次男)の親にはなれないかもしれないけど、私は○○の先生になる。師だよ」。最近になって聞き直したら、「あー、そんなことも言ってたっけねぇ」と、トボけられましたが、あれは麻ちゃんなりの葛藤の乗り越え方だったのだと思います。

麻ちゃんと次男は月日を重ねるごとに、“親子” というよりも、関わる部分を徐々に増やして、ゆっくりと関係を深めていきました。

次男は麻ちゃんをいろんな係に任命しました。勉強を教える係、料理を教える係、お小遣いを与える係、といった具合です。最近は “アルバイトを始めるにあたり、相談する係” なんていう係もありました。

次男は現在、思春期真っ只中。絵に描いたような中二病を絶賛こじらせ中です。先日も鬱々としていたので、気晴らしに次男と麻ちゃん、私の3人でディズニーランドへ行くことにしました。すると、親と一緒じゃつまらないと思ったのか、次男がカノジョを誘ったと言うではないですか! これには大いにアセりました。

麻ちゃんとカノジョはこれが初顔合わせ(私は既にカノジョと顔合わせ済み。その時は緊張して、2時間の食事で1年分のエネルギーを使い果たしました)。どうなることかと思いましたが、そのカノジョがとてもかわいくて、優しく性格の良い子なので、とても楽しい時間を過ごせました。

でもこれって、まさかのダブルデート? 人生って何が起こるか、本当にわかりませんね。

健康の心配に中二病と、今も何かと不安の残る次男ですが、先日、道を歩いていると、いきなり「僕は母さんたちに感謝してるんだ。今の僕があるのは麻ちゃんと、母さんのお陰だと思ってる」と言うんです!

普段怒ってばかりの次男が、いきなりそんなことを言うので、照れ臭いやら驚くやら。面食らって、こちらがモゴモゴしてしまいましたが、麻ちゃんの気持ちはいつのまにか次男の心に、しっかり根を張っていたようです。

まぁ、とても難しい子なので、まだまだ一筋縄では行かなそうなのですが……。

画像: 麻ちゃんは静かに乗り越えた

Composition:Yoshiyuki Shimazu

 

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