今月の人。

画像: 今月の人。

(漫画家)渡辺ペコさん

北海道生まれ。2004年『透明少女』でヤングユー新人まんが大賞ゴールド大賞を受賞し、“YOUNG YOU COLORS”にてデビュー。以後、女性誌を中心に活躍。
繊細で鋭い心理描写と絶妙なユーモア、透明感あふれる絵柄で、多くの読者の支持を集める。  
青年誌初連載となった『にこたま』は、三十路手前の同棲カップルの現実を描き、大きな反響を呼んだ。その他の著書に『ラウンダバウト』、『東京膜』、『変身ものがたり』、『ペコセトラプラス』、『昨夜のカレー、明日のパン』、『おふろどうぞ』などがある。
 
現在は結婚の嘘と真実を鋭く描く『1122(いいふうふ)』を “モーニング・ツー” にて連載中。

 

子どもの頃の気持ちを確かめるために
昔好きだった絵本を読んでみる

画像: 子どもの頃の気持ちを確かめるために 昔好きだった絵本を読んでみる

子どもの頃によく読んでいた絵本を、大人になってから思い出し、改めて買い直したという経験がある人はどれくらいいるだろうか。漫画家の渡辺ペコさんの場合、大学生になって、ひとり暮らしを始めたときに「もう一度読みたい」という想いが胸に浮かんだのは、ロングセラーの『おだんごぱん』の絵本だった。

「別に、ひとり暮らしがさみしかったというわけではないんですけど、自分が好きだったものを、ふと思い出したりすることがあって。

『おだんごぱん』は小さい頃に何度も見ていたんですよね。ちょっと読み取りにくい、変な感じがすごく印象に残っていて。今読んだら、どうかな? と、子どもの頃の気持ちを確かめたくて読んでみたんだと思います。大人になって読んでみても、不思議な印象は変わらず、やっぱり好きだなと思いました。

民話って、どこか不条理なところがあるというか、いわゆる啓蒙的な絵本とは違う風味がいいんですよね。おだんごぱん本人は何も悪いことはしていないのに、最後はあっけなくキツネに食べられちゃったりして。

あと、私は小さい頃から食い意地が張っていたので、食べ物がおいしそうな絵本が好きだったんです(笑)。おだんごぱんはすごくおいしそうで、どんな味なのかな? って、いつも想像しながら見ていました」

絵が好みかどうかも、絵本選びの重要なポイント。『おだんごぱん』はセピアがかった渋い色使いも含めて、絵を描くことが好きだった幼少期の渡辺さんを惹きつけた。

「流行とは無縁の絵の強さ。タッチとしてはフワッと、ゆるい感じで、洒落ててかわいいと思うんですけど、甘くはないんですよね。おじいさんやおばあさんの表情もちょっと読めないですし(笑)。想像の余地を上手に残してくれている絵なんですよね。その後の好みにも影響を受けていると思います」

 

異国っぽくて、郷愁を感じさせる
独特の言葉づかいもたまらない魅力

外国の民話をもとにした絵本の文章には、現代の日本の絵本とはひと味違う、不思議な言い回しも多い。聞いただけでは分からない言葉でも、子どもは案外楽しんでいたりする。

「『おだんごぱん』だと、おばあさんが “こなばこを ごしごし ひっかいて” とか。あと、先日、夫が娘に『三びきのやぎのがらがらどん‐ノルウェーの昔話‐』を読み聞かせしていたときに “でんがくざし” という言葉が出てきて、すごくびっくりしていました。

大きいやぎがトロルにすごむ場面で “これで めだまは でんがくざし” って言うんですよ。訳者の方による表現だと思いますが、“でんがく” って、串刺しにした田楽のことですよね(笑)。

お話の最後の “チョキン、パチン、ストン。はなしは おしまい” という独特の言い回しも印象的でしたね。ちょっと変だけど、なんか心に残るんです」

実は子どもの頃、家に絵本はそれほど多くなかったという渡辺さん。絵本好きになったきっかけは、祖父の家にあった絵本の月刊誌 “こどものとも” のシリーズだった。

「祖父が遊びに来る孫たちのために、毎月、定期的に購読してくれていたんですよね。テレビの下に、絵本がたくさんたまっていて。自分の好みで買った絵本だけじゃないから、乗り物や科学が題材の絵本もあって、そういう絵本を見るのがまたおもしろかったです。祖父の家に行くたびに、ずーっと夢中になって読んでいました」

 

民話がもとになっているお話は
その不可解さや不条理さゆえに
幼心に強い印象を残してくれた

『おだんごぱん ロシア民話』

画像: 訳:せたていじ 絵:わきたかず ¥1200/福音館書店

訳:せたていじ 絵:わきたかず
¥1200/福音館書店

おじいさんに頼まれて、おばあさんが焼いた、ほかほかのおだんごぱん。窓のところで冷やされたおだんごぱんは、ころんと転がると、表の通りへと逃げ出した。途中で出会ったウサギからも、クマからも楽々と逃げることができたのに、最後に会ったお世辞の上手なキツネには、つい気を許してしまい……。

ロシアの代表的な民話をもとにした絵本。「ぼくは、てんかの おだんごぱん……」で始まる、おだんごぱんの歌の繰り返しが耳に心地よく、読み聞かせにぴったり。口のうまい人こそ要注意、というメッセージは大人の胸にもしみじみ響く。

 

科学絵本シリーズが原作の
TVアニメにもすっかり夢中

自分が絵本を大好きだったから、子どもにも好きになってほしいという気持ちで、現在2歳の娘さんが赤ちゃんの頃から、夫婦で絵本をできるだけ読み聞かせしていた。

「むしろ、私が好きな本を読みたい! みたいな感じで。娘はその頃はおとなしく聞いていたけど、最近はあんまり……(苦笑)。娘は今、ネットフリックスで配信されている『マジック・スクール・バス』というアメリカのアニメに夢中になっています。

破天荒な先生が、不思議なスクールバスに生徒たちを乗せて、宇宙や深海、身体の中など、いろんなところに校外学習に行く話で、親が見てもすごくおもしろいんですよ。『フリズル先生のマジック・スクールバス』シリーズという絵本が原作になっているので、娘がもっと大きくなったら、絵本のほうも読んであげたい」

渡辺さん自身は、これまで〝家族″や〝夫婦″のあり方をテーマにさまざまな作品を描き続けてきた。親になったことで、描きたいものに新たな変化などはあったのだろうか?

「家族や親子に関しては、出産後も同じように疑問を持ったままなので、そこは以前と変わらないですね。ただ、子どもが娘だったからか、女の人のことや女性の性について、さらに考えるようになりました。娘が女の人として生きていくこと、その良さ、そのキツさを、自分とはまた少し別に考えることが増えたというか……。それがたぶん、自分がこれから描くマンガにつながっていくのかな、という気はしています」

 

【渡辺さん、これもオススメ。】

子ども向けの絵本の中に
作者のセンスや好みが隠れている

『おばけのてんぷら』

画像: 作・絵:せなけいこ ¥1200/ポプラ社

作・絵:せなけいこ ¥1200/ポプラ社

食べることが好きなうさこは、こねこくんからお弁当のおかずの天ぷらを分けてもらって、そのおいしさに大感激。さっそく作り方を教わったうさこが、ごきげんで天ぷらを揚げていると、おいしそうな匂いに誘われた山のおばけが、そーっと忍び込んできて……。

「私と娘では今は好みの絵が違ったりするんですが、せなけいこさんの貼り絵は親子で大好きです。シンプルだけど、色使いがとても素敵で、うさこの着ている服もおしゃれ。あと、食べ物の絵には、おままごとっぽいミニチュア感があって、しかもぜんぶおいしそうなんです。たぶん、せなさんも食べることが好きだと思うんですよね(笑)。

娘は他にもせなさんの『いやだいやだ』や『ねないこだれだ』が好きで、ひとりでもよく見ています。予定調和ではない、どこか不思議な後味のお話が多いのも魅力ですね」

画像: 『おばけのてんぷら』

 

動物も魚も鳥も虫もみんなうんち
子どもたちに愛され続けるロングセラー

『みんなうんち』

画像: 作・絵:五味太郎 ¥900/福音館書店

作・絵:五味太郎 ¥900/福音館書店

子どもにとって興味のある、そして健康のバロメーターでもある大事な “うんち” をテーマにしたユーモアいっぱいの絵本。ラストの “いきものは たべるから みんな うんちをするんだね” は名文。英語版もあり、アメリカでもロングセラー絵本として人気が高い。

「私が子どもの頃から読んでいて、今は娘に読んでいる絵本。改めて見ると、絵が本当に美しくて、かっこいいんですよね。いろんな動物やうんちの形が、ちゃんとイラストでありながら、すごくリアルに描かれていて。子どもにおもねらない感じ、というのかな。動物をかわいくデフォルメとか全然していないんですけど、とても見やすいんです。見るたびに、すごいな~と感動しています」

 

読んで、見るだけじゃない
楽しさと遊び心がつまった仕掛け絵本

『しろくまのパンツ』

画像: 作:tupera tupera ¥1400/ブロンズ新社

作:tupera tupera ¥1400/ブロンズ新社

「どこにいったんだろう?」パンツをなくしてこまっている、しろくまさん。そこへ、心配したねずみさんがやってきて、一緒にパンツを探しに行くことに。しましまのパンツ、かわいい花がらのパンツ、へんてこりんな水玉のパンツ……物語のラストには、あっと驚く発見が!

「娘の最近のお気に入り絵本は、ご夫婦ユニットで、さまざまな創作活動を続けているクリエイター、ツペラ ツペラさんの『しろくまのパンツ』。絵本を開く前に、真っ赤なパンツ型のカバーを脱がすところからワクワクしています。なくしたパンツを探すお話で、穴が開いたページをめくると、誰のパンツかが分かるという仕掛けが楽しいです。

ただ、娘の絵本の扱いがまだ荒っぽいので、ページをめくるときに破れないかとドキドキしますね。まぁ、小さいうちは仕方ないかなぁと思っているんですけど(笑)」

 

Illustration:Yuka Hiiragi Text:Keiko Ishizuka Composition:Shiho Kodama

 

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