画像: #9 パートナーの元夫さんとの
ユルくて微妙な関係

「オヤっさん」と言われてしまう
 私のパートナー

私のパートナー、麻ちゃん。私は彼女と付き合うまで、男性としか “お付き合い” をしたことがありませんでした。私にとって麻ちゃんは、30歳を過ぎて初めてできた “カノジョ” なわけです。彼女は戸籍も女、身体も女、社会的にも女。

見た目は中性的で、それほど男っぽくないですが、なぜかオヤジ臭が漂っています。そのオヤジ臭の原因が、発言によるものなのか、動きからくるものなのか? 彼女を知る人からは、「麻ちゃんって、オヤっさんですよね……」と、言われてしまうような “一応、女” なんです。

人生初の “カノジョ” ができた時、私は「これからは女友達といる時みたいに、おしゃべりするのかな? 旅行するときは “カレシ” がいる時みたいにおまかせにするんじゃなくて、一緒に決めたりするのかな?」と、ちょっとドキドキしていたのですが、驚くほど変化はありませんでした。逆に「 “カレシ” と付き合っていた時と同じなんだ!」と、びっくりしたほどです。それはつまり、話をしていても女友達のように楽しい相槌を打ってくれるわけではないし、細やかな気遣いもないということです。

例えば「仕事の愚痴を聞いて、ちょっと共感してほしい」と思っても、麻ちゃんには無理な話。恋愛相談によくあるダメ男そのままに、つまらないアドバイスを繰り出して私をムカッとさせます。まるで新聞越しに生返事するお父さんそのまま。「いったい性別ってなんだろう?」と思います。

男のそういうダメなところを、それまで私は全部「男だから仕方ない!」ということにしていました。それが麻ちゃんと付き合うようになって、「男ってヤツぁ!」と簡単に言えなくなり、いちいち「男ってヤツ、じゃあなくて、麻ちゃんってヤツぁ!」と、言い直さなければならず、なんとも収まりが悪く感じたものです。

もっと “ややこしく” なったところもあります。“カレシ” が「女友達と2人で旅行に行く」と、言い出したとします。かつての私なら(というか普通一般でもそうですよね!)「絶対NG!」ですが、麻ちゃんが女友達と旅行に行くとしたら……?

女の子が好きな麻ちゃんが、女の子と2人で旅行に行く……? う~んダメダメ「絶対NG!」と、最初は言っていたのですが、麻ちゃんの仲のいい友達は、やっぱり女の子なわけです。

余談ですが、ゲイの男性がノンケ(異性愛)の女性と仲良くなることは多いけれど、レズビアンの女性とノンケの男性が親友、なんていうのはあまり聞いたことがありません。

別に嫌いということでは全然ないですよ。ただ、ゲイの男性とノンケの女性のように「あの男、かっこいいよね♥」みたいに盛り上がらない。共通の話題がないのだと思われます。

「旅行は絶対NG!」なんて言っていたら、麻ちゃんに友達がいなくなってしまうと思い直してからは、簡単に咎められなくなりました。ただ、その一方で15年も付き合っていると、麻ちゃんがその女性を “女の子として” 好きなのか、“友達として” 好きなのか、見分けがつくようになり、それでOKかNGか判断しています。見分けるポイント? 麻ちゃんのそわそわ具合ですね。

 

自分と比べようのない
「元夫さん」にモヤモヤ

そんな麻ちゃんにも、かつて男性と結婚していた時があります。付き合えば付き合うほど “オヤっさん” ぽい麻ちゃんが、本当に奥さんをやっていたのだろうか? 元夫さんってどんな人なのか? 麻ちゃんと元夫さんの結婚生活がイメージできず、それは長らく謎に満ちたものでした。

私はとても心の狭い女なので、自分が付き合っている人の元カノなど、人柄がいかに素晴らしかろうと、「元カノ」というカテゴリーに入っただけで、問答無用で「嫌い!」です。そんな寛容さのカケラも無い私が、「元カノ」ではなく、元夫さんという「元カレ」をどう位置付けたものか……。これは新手過ぎます!

そもそも「元夫」という時点で、「今妻」の私とどう比べればいいのか分かりません。「彼女のほうが、髪がサラサラだわ」とか「胸が大きいわ」とか言いようがない! ノンケの継母仲間と話していると、“元嫁の影がチラついてムカつく!” みたいな愚痴をよく聞きます。私は「それは腹がたつよねー!」などと強くうなずきつつ、実は全然分かっていませんでした。

やきもちを焼きたいような、だけどイマイチどう焼けばいいのか分からない。元夫さんとは、娘と元夫さんが一緒に出かけた時に、たまに会って挨拶をする程度。娘を挟んで付かず離れずの微妙な関係が続いていました。そんなある時、元夫さんから小学生だった娘の運動会を見に行きたい、という連絡が入ったのです。

「お相手は麻ちゃんにお任せして、会場でお会いしたら挨拶くらいはしよう」と思っていると、運動会前になって麻ちゃんから「ごめーん、仕事が入って運動会に行けなくなっちゃった! 元夫さんが来ると思うけど、よろしくね!」という無茶振りが! 「エエエ~~~!!」と思ったものの、元夫さんがとても楽しみにしている様子で、断りきれないまま当日を迎えることになったのです。

 

突風が吹き消す、やきもちを焼く火

運動会の日、空は晴れ渡っていました。娘だけでなく、息子たち(私の実子)も同じ小学校に通っていたので、3人の競技を見るため、私は校庭をあっちへ行ったり、こっちへ行ったりと大忙し。子どもの応援をしながら、元夫さんがいつ来るかと気が気じゃありません。

そして、まもなく娘のかけっこが始まるという頃、ふとゴール付近を見たら、ベストポジションでカメラを抱え、手を振っている元夫さん、すなわち娘のお父さんの姿が! 「あぁー、娘にそっくり……」

「お久しぶりです」と挨拶をしたものの、なんとも気まずい沈黙。「うわぁー」と思っていると、娘のかけっこの順番が回ってきました。かけっこが苦手で、毎年ビリだった娘ですが、この年は違いました。娘の奮闘に、お父さんも大興奮! 一緒になってワアワア応援していたら、クラスの顔見知りのお母さんに「あらぁ~、旦那さん!?」なんて言われ、私も娘のお父さんも、声を揃えて「違います!」と即答。まさかパートナーの元夫さんと夫婦に間違えられるとは! もうこうなると、やきもちとか言っている場合じゃありません。

大喜びの娘は「お昼のお弁当、一緒に食べよ!」と、無邪気にお父さんにおねだり。娘から甘えられたお父さんもデレデレで、「あぁ~、この展開は……」と思っていたところに、漫画のようなタイミングで現れるおばあちゃん(私の母)! 「あら~、(お父さんと一緒で)良いわねー。じゃあお父さんも一緒に食べましょう。お弁当たくさん作ってきたから」って! 「あぁ~、誘っちゃったよ!」

もう他人から見たら、まごうことなき「家族」。お父さんとお母さんと、3の子どもにおばあちゃん。その中身がまさかの、レズビアンカップルの親子(プラスおばあちゃん) と、そのカップルの一方の元夫さん (マイナス元妻)という超絶ややこしい集団。そんな集団がニコニコお弁当を囲んでいるとは、誰が気づくでしょうか!?

人間、想像を上回り過ぎることが実際に起こると、些細なことなど、どーでもよくなるものです。この状況、もうおかし過ぎる。元夫さんだとか、そういうことは置いておいて、気のいい、娘のお父さんってことで “もういいや!” と ということに落ち着きました。

時は流れ、娘は高校生に。実は3ヵ月前から、娘は15年ぶりにお父さんと一緒に暮らしています。通い始めた高校が思いのほか遠く、朝の通学がキツいというので、学校に近いお父さんの家から通うため、平日のみ移住したのです。これまでも娘と遊びに行ったり、自分の家にお泊まりさせたりは頻繁にしていたものの、共に生活するとなると1歳の時に別居したきりなので、お父さんは大変張り切っている様子です。

とはいえ週末や長期の休みには、我が家に娘が帰ってきて、とても賑やかになります。先週末、帰ってきた娘に「お父さんとの暮らしはどう?」と聞いてみたところ、「1日目の朝は起きてきたけど、2日目からは、もう朝起きてこなかったよ」とのこと。久しぶりの娘との生活ですが、長年の生活習慣はそう簡単に改まらないようです。

画像: 突風が吹き消す、やきもちを焼く火

 
Composition:Yoshiyuki Shimazu

 

ご感想や応援メッセージ

掲載作品に対するご感想や応援メッセージが、こちらの送信フォームよりお送りいただけます。

なお感想以外のご質問、ご意見、ご要望、苦情などは、このフォームからお送りいただいても返信、対応ができかねますので、あらかじめご了承ください。

メッセージ送信にあたり、当社の個人情報保護方針をご確認ください。
講談社プライバシーポリシー

人気記事

 

This article is a sponsored article by
''.