子は親に見守られて育つ。

この言葉は、本当に大切な言葉だと、日々実感しながら子育てをしている。

先日、こんなことがあった。
僕が一平と2人で風呂に入っていると、そこに二平がやってきて「公文をやってるんだよ!」と自慢げに言ってきた。

僕は「すごいね! 引き続き頑張って」と返した。それで、その後、一時間近く我が家は大騒ぎになった。なんで? どこにトラブルの種があるの?

一平は、二平が自分をバカにしにきたと感じたらしい。一平は、その日はまだ公文をやっていなかった。なのに、俺はできているよ、と二平が自慢をしにきた。そして、それを「すごい」と僕が褒めたことで、遠回しに一平を非難していると思ったのだ。

「二平は毎日、何をやってもすごいと褒められるのに、自分は月に1回くらいしか褒められない。みんな、自分のことを好きじゃないからだ」と一平は言う。

さらに一平には、兄弟喧嘩のたびに、長男だからもう少し我慢をするようにと、親である僕らはお願いする。その度に、一平はダメ出しを受けているとも感じていたのだ。

大人になってしまった僕らが、子供に伝えているはずのメッセージと、子供が実際に受け取るメッセージは、大きくずれている。大人になると、自分の子供の頃の感受性や弱さを忘れてしまっている。

そのずれに気づくことは、僕という人間を大きく成長させてくれる。子育てが親も育てるというのは、きっとこういう気づきのことを言うのだろう。こうやって大人になって思い出した子供の頃の気持ちは、自分が子供の時に感じたときと違って忘れにくい。

僕らは子供が自分たちの元にやってきてくれたことをとても嬉しく、幸せだと思っている。そのことを大前提として、一緒に生活をし、色々なことを言い合っている。

でも、子供の側は、そのことを大前提にしていない。別の子だったら、親はもっと幸せだったんじゃないか? ってことを考えたりする。

だから僕は、子供を抱っこする度に、何度も何度も、「生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ」ということを繰り返し言う。朝も言って、夜も言う。それでも、子供はその大前提に不安になる時がある。

それは、妻との関係も同じだ。子育てをして、この気づきを得るようになってから、「結婚できてよかったよ」ということを、事あるごとに妻に言うようになった。流石に、朝と夜の2回は言わないけど。

画像: #8 月に一度しか褒められない!?

この気づきは、仕事におけるクリエイターとの関係でも重要だと気づいた。僕ら編集者は、とてつもない才能を感じた人に、一緒に仕事をしたい! と提案する。

しかし、相手が新人であれば、才能はあれども、何度もダメ出しをして作品を作っていくことになる。その時に、新人は、「自分みたいなダメな才能と本当は付き合いたくないのに、仕事だから付き合ってくれているのだ」というような気持ちになる。

そもそも、声をかけたのは、彼にすごく才能を感じたからなのに。そのことを繰り返し編集者が言わないと、相手には伝わらない。

会社も同じだ。社員は、自分が採用試験で選抜されて入ったことをすぐに忘れる。結果をすぐに出さないと、必要ないと思われるのではないかと考えてしまう。どこが良さなのか、何を期待しているのかを、上司は繰り返し話さないといけない。

寂しさを感じるのは、一平だけじゃない。二平も三平もだ。

最近、二平は逆立ちを覚えた。「すごいね」が、逆立ちをすれば家の中だと簡単にもらえる。それで、二平は町中でも幼稚園でも、逆立ちしまくりである。自分が話題の中心からそれている時間が長くなると、「ねえ、ねえ」と騒ぎながら逆立ちをする。人は人に見ていて欲しいのだ。子供も大人も。

僕はFitbitというスマートウオッチをつけている。
歩いている歩数や距離が分かるだけでなく、心拍数をはかって睡眠の深さまで記録してくれる。それを使って深い睡眠をとる方法を試行錯誤しているうちに、お酒をやめることにもなった。あんなにお酒が大好きだったのに。社名をコルクと名付けたくらいなのに、だ。

Fitbitに行動を支配されている(笑)。この前、充電をしたままFitbitを家に忘れて、1日を過ごした。そうしたら、記録されていないせいで、その日が存在しないような、すごく損した日を過ごした気持ちになってしまった。

僕も誰かに見ていて欲しいのだ。
誰も見てくれていなければ、僕自身にでもいいから、見てもらっていたいのだ。

Illustration:Sinya Kinosita

 

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