今月の人。

画像: 今月の人。

(落語家)
春風亭一之輔さん

1978年、千葉県生まれ。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。
 
2012年に21人抜きで真打に昇進する。現在の落語ブームを牽引する新進気鋭の噺家として、全国各地で精力的に独演会を開催し、2度に及ぶヨーロッパ公演も成功させている。
 
また、ラジオのパーソナリティー、テレビ出演、雑誌や新聞のコラム執筆など、幅広いメディアで活躍。今年刊行した写真本『春風亭一之輔の、いちのいちのいち』(小学館)も好評。
 
子ども向けの落語集として『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』(小学館)がある。
公式HP “いちのすけえん

 

絵の力強さに衝撃!
自分の中に眠る可能性に
気づかせてくれる1冊

『とべバッタ』

画像: 作:田島征三 ¥1400/偕成社

作:田島征三 ¥1400/偕成社

おそろしい天敵から身を守るため、小さな茂みに隠れ住んでいたバッタが決心して、大空に向かって飛んでいった――。絵本作家、田島征三が1988年に発表し、“絵本にっぽん賞” や “ボローニヤ国際児童図書展グラフィック賞推薦” など数々の賞を受賞した名作。

 

バッタのようにならねば……と
背中を押してもらったような気がした

落語家の春風亭一之輔さんにとって、忘れられない絵本といえば、はたちのときに出会った『とべバッタ』である。絵本作家、田島征三さんの展覧会に出かけたときに手に取り、ページをめくっていくうちに、すっかり夢中になってしまった。

「そのとき、すぐに自分で買いましたもん。今も家にあります。とにかく、かっこいいんですよね。描きなぐったようなダイナミックな絵で、スピード感がある。ヘビやカマキリが、バッタをめがけてシャーッと襲いかかってくる様子も臨場感にあふれていて。しかも、バッタの顔はシンプルに眼が描かれているだけなのに、おびえている感じなど表情がすごく繊細に伝わってくるんですよ。

実は、基本的に僕はそんなに向上心がないんです。自分から切り拓いていくとか、そういうところがあまりなくて、流れに沿って生きているんですね。で、そんな僕からすると、このバッタは本当にすごい。こんなところで、おびえながら生きていくのは嫌だ、と勇気を出して、必死に飛んでいくんですから。ちょっと尊敬しますね」

画像1: バッタのようにならねば……と 背中を押してもらったような気がした

物語の途中、大空に向かって高くのぼりつめたバッタが、ついに力つきて、下へ下へと落ちていった後の展開もまた胸を打つ。

「今度は、それまでに一度も使ったことのなかった、自分の背中についている羽を使って、はるか彼方へと飛んでいくんです。最後のシーンはすごく印象的で……バッタに大切なものを教わった気がしましたね。使ったことのないものを使ってみたら、こんなことができるんだ! とか、自分にこんな可能性があるんだ! と気づかせてくれる絵本です」

ちなみに、当時大学生だった一之輔さんを、田島征三さんの展覧会に誘ってくれたのが今の奥様。現在、自宅にあるたくさんの絵本は、もともと絵本好きだった奥様が選んだものか、奥様の実家から持ってきたものだという。

「カミさんは、小さい頃から絵本をたくさん読んで育ってきているので、僕よりも絵本に詳しいんです。うちで子どもたちに絵本の読み聞かせをしていたのも、やっぱりカミさんのほうが多かったですね。僕は公演があって、夜はほとんどいないんで。カミさんは、学校のPTA活動でも絵本の読み聞かせをしているんですよ」

画像2: バッタのようにならねば……と 背中を押してもらったような気がした

読み聞かせを成功させるコツは
親の自分も心から楽しんでしゃべること

一之輔さんのお子さんは現在、小6の長男、小3の次男、小1の長女の3人兄妹。奥様にはかなわないものの、一之輔さんも時間があるときは、やはりお子さんたちに読み聞かせをしてきた。噺家のお父さんの読み聞かせとは、何とも贅沢でうらやましいかぎりだ。

「子どもたちが大きくなったので、最近は読み聞かせをすることも少なくなったけど、昨年くらいまでは読んでいましたね。もろに落語をやるときもありますよ(笑)。落語っぽい桃太郎の話とか。小噺みたいな感じでね。

読み聞かせや落語をやるときは、親である自分も楽しんでしゃべっていないと、子どもって、すぐ離れていっちゃうんですよ。親が『もうストーリーは知っているから、とりあえず読めば寝るだろう』みたいな感じでいると、子どもにも『こいつ、気合入れてないな』って見抜かれちゃう(笑)。だから、自分もノッて、気持ち入れてしゃべらないとダメなような気がします」

ときには「横で見てろ」と言って、お子さんを自身の公演に連れて行く。「夜、ほとんど家にいないですし。まぁ、何やっているか分からないとね、ちょっとお互いにさみしいところがあるじゃないですか。だから、見せておこうかなと思って。子どもは公演を聴きながら、楽しそうに笑っていますよ」そんな父の影響を受けて、子どもたちが家で落語のごっこ遊びをするという、かわいらしい姿を見せてくれたことも。

「長男が小学3~4年生の頃ですね。弟と妹をお客さんとして前に座らせて、落語をしゃべったりしていたんですよ。でも、僕が『何やってるの?』って、のぞくと、すぐにやめちゃうの(笑)。あと、最近は家でよく『一休さん』とかの劇をやっていますね。3人で配役を決めて。カミさんが見ていて、ビデオを撮って、後で僕に見せてくれるんです(笑)」

 

【一之輔さん、これもオススメ。】

大人が読んでも
味わい深い珠玉の物語

『こぎつねコンとこだぬきポン』

画像: 作:松野正子 絵:二俣英五郎 ¥1500/童心社

作:松野正子 絵:二俣英五郎 ¥1500/童心社

つばき山に住むこぎつねコンと、隣のすぎの木山に住むこだぬきポン。ある日、橋もかかっていない崖っぷちで、お互いの姿を見つけたコンとポンに、それぞれの両親は「決して一緒に遊んではいけない」と言い聞かせるのですが……。

「僕が小さい頃から大好きだった絵本です。ほのぼのとした可愛い絵が印象的で、たぬきのお母さんが赤ちゃんにおっぱいをあげているシーンとか、よく覚えています。代々憎しみ合っていたきつねの家とたぬきの家が、子ども同士の友情を通して変わっていく。ずっと悪いやつだと思っていたのに、実際に会ったら、いい人だったという。宗教対立など今の世界情勢にもつながるような、すごくいい話なんです。絵本にしては、けっこう文字が多いんですが、うちの子どもたちにもぜひ読ませたいですね」

 

アナーキーな設定に子どもたちも思わずニヤリ

『どろぼうがっこう』

画像: 作:かこさとし ¥1000/偕成社

作:かこさとし ¥1000/偕成社

まぬけな校長先生と、まぬけな生徒たちの世にもおかしなどろぼう学校の話。ある真夜中、みんなは町で一番大きな建物に忍びこみました。しかし、そこはなんと……!

40年以上にわたるロングセラーとして、世代を超えて多くの読者に愛され続けている、かこさとしの代表作の一つ。「今ちょうど、小3の次男が、学校でこの絵本の劇の練習をやっているんです。泥棒が主人公という設定は、絵本としてはアナーキーですよね。『かわいいせいとたち』って表現される生徒ひとりひとりの顔が、かなり悪そうなヤツらばかりなのがおかしい(笑)。教訓じみた話じゃないところも、また子どもが喜ぶポイントかもしれない」

 

虫歯のこわさと歯みがきの大切さがリアルに伝わる

『はははのはなし』

画像: 作・絵:加古里子 ¥900/福音館書店

作・絵:加古里子 ¥900/福音館書店

歯の大切さと歯をじょうぶに守る方法を、カラダ全体との関連の中で、分かりやすく楽しく教えてくれる絵本。

「小さい頃に読んで『歯みがきしないと、こうなっちゃうんだ!』と思って、本当におそろしかった記憶があります。虫歯になった子どもの表情と、虫歯の青みがかった色合いの絵が、もう怖くて怖くて。うちの子どもたちはまだ虫歯がないんですが、やっぱりこの絵本を見て怖がっていますよ。親が『歯をちゃんと磨きなさい』とガミガミ言うより、まずこの絵本を読ませたほうが、絶対に効果がありますね(笑)」

 

一之輔さんの新作落語が絵本に!

『だんご屋政談』

画像: 作:春風亭一之輔 絵:石井聖岳 編:ばばけんいち ¥1500/あかね書房

作:春風亭一之輔 絵:石井聖岳 
編:ばばけんいち ¥1500/あかね書房

さまざまな流派の人気落語家の噺を、古典新作おりまぜて絵本にする企画「古典と新作らくご絵本」シリーズの1冊。

古典の『初天神』を下敷きにした春風亭一之輔さんの新作落語。初天神参りに行き、「だんごを買って」と、おとっつぁんを困らせるきんぼうが、なんと大岡裁きに……!?

人物や背景を描いては切り抜き、半立体で画面を組み立てる手法に挑戦した石井聖岳さん(同本で絵を担当)の新感覚の表現にも注目。

 

Illustration:Yuka Hiiragi Text:Keiko Ishizuka Composition:Shiho Kodama

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