半世紀の間に急増した
子どものアレルギー疾患

赤ちゃんが生まれて、ハッピーな気分にひたっていたのもつかの間、ある日、わが子の肌に湿疹を見つけたとたん、胸に広がる不安……。「これって、もしかしてアレルギー!?」

日本を含む先進国では、ここ半世紀の間に、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支ぜんそくといったアレルギー疾患を持つ人が急速に増えています。現在、日本では何らかのアレルギー疾患にかかっている人の割合は、約2人に1人。患者さんを年齢別に見ると、全体的に若年者に多いことが分かっています。

画像1: 半世紀の間に急増した 子どものアレルギー疾患

アレルギー疾患は子どもの頃に発症することが多く、大きくなるにつれて、しばしば重なって起こります。たとえば、乳幼児期にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症すると、その後、気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎にもかかりやすくなるなど、加齢とともに、次々にアレルギー疾患が現れる現象のことを “アレルギーマーチ” と呼びます。そのため「これからどうなるのか……」と悲観的になってしまう親も少なくありません。

画像2: 半世紀の間に急増した 子どものアレルギー疾患

 

どうしてアレルギーが起こるの?

アレルギーとは、実は免疫と表裏一体の関係です。まず、免疫では、細菌やウイルスなど抗原(異物)が身体に入ったときに、その抗原に対する抗体が体内で作られます。そして、この抗体が、再び身体に侵入してきた同じ抗原を攻撃して、病気になるのを未然に防いでくれます。このようないい働きをするのが免疫システムです。

しかし、有害なものから身体を守る免疫の働きが過剰になると、無害なものまで排除しようとしてしまいます。これがアレルギー反応です。

アレルギー反応では、アレルギーを起こす原因となるアレルゲンが身体に入ったとき、細菌やウイルスに対するときと同じように、体内で抗体が作られます。そして、再び同じアレルゲンが体内に入ってくると、抗体が反応して、マスト(肥満)細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、身体に不益なアレルギー反応が出てしまいます。この状態が皮膚に起きれば、湿疹や赤みが出て、かゆくなりますし、気管支に起きれば、ぜんそく症状が出るというわけです。

 

アレルギー発症のスイッチを
入れるものとは?

画像: ヒトの皮膚片はアレルゲンではないが、タンパク質でできているため、ダニにとって栄養満点のエサに。結果として、ダニを繁殖させるきっかけとなってしまう

ヒトの皮膚片はアレルゲンではないが、タンパク質でできているため、ダニにとって栄養満点のエサに。結果として、ダニを繁殖させるきっかけとなってしまう

自分がアレルギー体質だから、遺伝によって、子どももアレルギーを発症してしまうかもしれない……と悩んでいる人は多いかもしれません。しかし、アレルギーの発症や悪化には、体質だけでなく、環境など多くの要因が関わっています。子どもの3大アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支ぜんそくの原因を見てみましょう。

アトピー性皮膚炎の原因……家にいるダニやカビ、ハウスダスト、皮膚についた細菌、汗や汚れ、猫や犬などのペットの抜け毛やフケ、食事など。乾燥によって肌のバリア機能が弱まると、角質層の隙間からホコリなどの刺激物が体内に侵入しやすくなり、トラブルを起こすと考えられています。

食物アレルギーの原因……特定の食物に含まれるたんぱく質がアレルゲンとなって引き起こされます。中でも、卵、牛乳、小麦が3大アレルゲンで、合計で全体の7割近くを占めています。ピーナッツや蕎麦は割合が少ないものの、重篤なアレルギー反応を起こす可能性があるため、注意が必要です。

気管支ぜんそくの原因……ダニやカビ、ハウスダスト、ペットの抜け毛やフケ、タバコの受動喫煙、大気汚染など。子どものぜんそくの95%はアレルギー性です。気管支の内側に慢性的な炎症があるぜんそく患者は、風邪をひいたり、大量のアレルゲンを吸ってしまうなど、わずかな刺激で発作が起きます。

 

食物アレルギーも
ダニと関係がある!?

乳幼児のアレルギー発症において、最初にスイッチを入れる原因として考えられているのが、家の中にいるダニです。特にアトピー性皮膚炎と気管支ぜんそくにとって、ダニは最も重要なアレルゲンといえます。さらに、ごく最近の研究では、食物アレルギーさえもダニと決して無縁ではないことが分かってきました。

食物アレルギーと聞くと、食べることでアレルギーを起こしてしまうと思いがちです。そのため、昔はアレルギーの素質がある赤ちゃんには、念のため、アレルギーを起こしやすい卵などの食べ始めを遅くしましょう、という指導がおこなわれていました。しかし、最近の欧米の研究では、予防効果がないどころか、むしろ食べ始めを遅くした子どものほうに食物アレルギーの発症が多いという研究結果も出てきました。

食べさせていないのに、なぜ食物アレルギーになるのでしょうか。たとえば、イギリスの疫学調査では、ピーナッツを食べさせていないのに、ピーナッツ・アレルギーになる子どもが多い理由について、ピーナッツを成分に含むスキンケア製品を使用していたからだという結果が報告されました。ピーナッツを含むスキンケア製品を使ったグループと、使わないグループを比べると、スキンケア製品を使ったほうが6.8倍もピーナッツ・アレルギーのリスクが高まると分かったのです。

食物アレルギーには、アトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患を合併している子どもが多いことが知られています。そのため、アトピー性皮膚炎などで炎症している皮膚に食物がくっつくことで、アレルギーを起こすような抗原が身体に侵入し、食物アレルギーを起こす可能性があると考えられるようになってきました。

つまり、日常生活においてダニなどの悪化因子を減らし、肌の健康を守って、アトピー性皮膚炎の症状をよくすることは、食物アレルギーの予防にもなることがはっきりしてきたのです。

原因の除去は、アレルギー疾患の大切な予防や治療につながります。もし、子どもがアレルギーと診断されても、あせらずに対策に取り組んでいきましょう。次回は、アレルギー疾患の最大の敵、ダニの実態についてレポートします。

 

Composition:Keiko Ishizuka

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