今月の人。

画像: 今月の人。

(作家) 
山崎ナオコーラさん

1978年、福岡県生まれ。2004年、会社員をしながら書いた『人のセックスを笑うな』で第41回文藝賞を受賞し、作家活動を始める。著書に、小説『人のセックスを笑うな』、『浮世でランチ』、『カツラ美容室別室』、『ニキの屈辱』、『昼田とハッコウ』、『ネンレイズム/開かれた食器棚』、『美しい距離』(島清恋愛文学賞受賞)のほか、エッセイ集『指先からソーダ』、『かわいい夫』、『母ではなくて、親になる』などがある。モットーは「フェミニンな男性を肯定したい」。

 

啓蒙的なことは抜きにして
ただ、子どもに優しく寄り添う
という作者の姿勢に深く共感

『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』

画像: 作・絵:高野文子 ¥900/福音館書店

 作・絵:高野文子 ¥900/福音館書店

「しきぶとんさん、かけぶとんさん、まくらさん。あさまで よろしくおねがいします」夜眠る前、男の子が「おしっこがでたがりませんように」「おっかないゆめをみませんように」と、おふとんたちにそっとお願いをする。すると……。

人気漫画家・高野文子の初の絵本。寝る前に不安な気持ちになった子どもが、安心感に包まれて眠ることができる温かいストーリーが魅力。

 

作家の山崎ナオコーラさんが昨年出産したお子さんは、現在1歳半。もともと出産前から絵本好きだった山崎さんだけに、本棚には絵本がどんどん増え続けている。

「私自身が家にいる仕事で、テレビがあるとつい見ちゃって、時間をとられてしまうので、うちにはテレビを置いていないんです。子どもに対して、エンターテインメントがないから悪いなぁ、という思いがあるぶん、絵本をいっぱい置いています(笑)」

今、一番のおすすめ絵本は、子どもが眠りにつく前のひとときを描いた『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』。

画像1: 『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』

「これは出産祝いにプレゼントしていただきました。作者の高野文子さんは漫画家さんで、もともとマンガの『るきさん』も大好き。子どもが夜寝るときのことをモチーフにした絵本が世の中にたくさんある中、これは『子どもは早く寝なさい』みたいな大人目線の啓蒙的な匂いがまったくないところがすごくよくて。

ただ、子どもに寄り添って、おふとんたちの気持ちを描くっていう、その姿勢がすばらしいなと思いました。絵もすごくデザイン的で、大人が読んでいてもかっこいい! と感じます」

 

生後数ヵ月の赤ちゃんが、
ハッキリした色合いの絵本に
注目してくれるだけで嬉しくなる

画像2: 『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』

 

子どもがまだ何も分からないうちから本を読んであげようと、出産前から心に決めていた。実際に絵本の読み聞かせを始めたのは、子どもが生後2ヵ月の頃だ。

「赤ちゃんって、最初はまだ視力がよくなくて、黒、白、赤などコントラストの強い色しか分からないみたいなんです。

だから赤ちゃん向けの絵本『あかあかくろくろ』(かしわらあきお絵、学研プラス)を顔から20cmくらいの距離まで近づけて『見えている!』って、夫と喜び合ったりして(笑)。あと、0、1、2歳向けのシリーズの絵本で『たべたのだーれだ?』(たむらしげる作、福音館書店)も好きですね。1歳になると、子どもが『これを読め』と言わんばかりに本棚から絵本をいっぱい取ってくるようになりました」

山崎さん自身の絵本についての一番古い記憶は、2~3歳の頃にさかのぼる。

「まどみちおさんの『ママだいすき』が最初の絵本だった気がします。親は絵本をいっぱい買ってくれたし、図書館にもよく連れて行ってくれて、とにかく小さい頃から絵本をたくさん読ませてくれましたね。本好きになるのは何歳からでも遅くないと思いますけど、私の場合は早くから読めて、すごくありがたかったです」

お子さんが自分で絵本のページを初めてめくったのは、生後10ヵ月のとき。その後は紙を破くことにも熱中。最初に破いた記念すべき絵本のページは、テープで修理した後、破いた日にちも書き留めた。「本のページがめくれるなら、大丈夫だとホッとしました。現実でいろんなつらいことがあっても、もうひとつの世界が持てる。自分だけの逃げ場ができるので」

この秋、山崎さんは初めて手がけた絵本『かわいいおとうさん』を刊行した。目指したのは、大人が読ませたくなる絵本というよりは、子どもが本当に楽しめる絵本。

「本っていうと、親はつい勉強のためだと考えてしまいがちですが、決してそうじゃなくて。本は空想や逃避の手段として、ただ楽しめばいいし、別に理解する必要もないって思うんです。私自身、大人になっても、読んでいる本をちゃんと理解できていないこともけっこう多くて。それでも、分からないままでもページをめくるっていうのが、人生大事なんじゃないかな。だから子どもも『よく分からないけど、なんかおもしろいからページをめくろう』っていう感覚を大切にしていってほしいですね」

ページをめくるのがおもしろい、
紙を破くのがおもしろい、で十分。
絵本はどんなふうに楽しんだっていい

 

山崎さん、これもオススメ。

がまくんとかえるくんの
ユーモラスな友情

『ふたりはともだち』

画像: 作:アーノルド・ローベル 訳:三木卓 ¥950/文化出版局

 作:アーノルド・ローベル 
 訳:三木卓 ¥950/文化出版局

仲良しのがまくんとかえるくんの友情物語5編を収録。「信じられないくらいダメダメながまくんを、かえるくんが全肯定しているという友情にグッときます。かえるくんはとてもいい人で真面目なのに、がまくんだけひどいという、まったくイーブンじゃない人間関係がいい。まさに友情って『これだ!』っていう感じですね。

こんな友達ほしいなぁと私も思うし、子どもにも、こういう友達がいつかできたらいいなぁと、すごく思います

 

ページからほとばしる命のエネルギー

『オレときいろ』

画像: 作:ミロコマチコ ¥1500/WAVE出版

 作:ミロコマチコ ¥1500/WAVE出版

命が芽吹く季節、ある日、猫は気配を感じる。「きいろがオレにまとわりつく……」やがてそれは形を変えながら、どんどん増殖して――。

気鋭の絵本作家ミロコマチコが描く命の気配に満ちた世界。「数年前に本屋さんで見かけて、思わずジャケ買いしてしまいました。この本はとにかく目に鮮やかな黄色の絵がすばらしいですね。黄色と猫の群青色との対比も印象的。子どもも大好きで、自分で本棚からよく取ってきては読んでいます」

 

シルエットのおおかみが
体現する孤独

『やっぱりおおかみ』

画像: 作・絵:ささきまき ¥900/福音館書店

 作・絵:ささきまき ¥900/福音館書店

自分に似た仲間を探しながら、いくつもの町をさまいよい歩くひとりぼっちのおおかみの子ども。いろいろな動物を見ても、満足することができないおおかみは、とうとうおばけがたくさんいる墓場までやってきたのだが……。「孤独の良さが描かれている絵本です。

『ふたりはともだち』では友情っていいな、と言ったんですけど、友達がいなくてもいいんだっていうことを言ってくれている感じがして。やはり孤独も大事だなと思いますね」

 

山崎ナオコーラさんが
手がけた初の絵本

『かわいいおとうさん』

画像: 作:山崎ナオコーラ 絵:ささめやゆき ¥1200/こぐま社

 作:山崎ナオコーラ 絵:ささめやゆき
 ¥1200/こぐま社

「おとうさんの かお ずっと ずーっと みていたいよ あさも よるも みていたいよ」シンプルな言葉と絵に、幼い子どもが父親に対して抱くピュアな愛情がたっぷりとつまった1冊。

父と子のほほえましいスキンシップの様子から、とにかく、お父さんがかわいい! お父さんが大好き! という子どもの想いがストレートに伝わってきて、親子で一緒に読むと幸せな気持ちになれる。お父さんになった男性へのプレゼントにもぴったり。

  

Illustration:Yuka Hiiragi Text:Keiko Ishizuka Composition:Shiho Kodama

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