画像1: #3 ヨシタケシンスケさん

今月の人。

画像: 今月の人。

絵本作家
ヨシタケシンスケさん

1973 年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。2013 年に刊行
した絵本デビュー作『りんごかもしれない』で第6回MOE 絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で第8回MOE 絵本屋さん大賞第1位を受賞。『もう ぬげない』で第9回MOE 絵本屋さん大賞第1位、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞する。他の著作に『あるかしら書店』『つまんない つまんない』『ヨチヨチ父―とまどう日々―』など多数。

 

子どもの頃と、大人になった後。
人生で2回出会えるのが
絵本のすばらしさ

『やっぱりおおかみ』

作・絵:ささきまき ¥900/福音館書店

ひとりぼっちの子どものおおかみは、仲間を求めて、ぶたの町、うさぎの町へとさまようが、どこへ行っても仲間は見つからない……。コミック誌“ガロ” でマンガを描いていた佐々木マキの絵本デビュー作。今までの絵本にはない斬新なテーマで40 年以上にわたるロングセラーに。「子どもの頃は意味が分からなくても、何十年か後にもう1回読んで『すごい!』って思う。そんな絵本を僕も作りたいという欲があります」

画像: 『やっぱりおおかみ』

「『お気に入りの絵本は?』と聞かれたら、まず絶対にこれを挙げるんです」

絵本作家のヨシタケシンスケさんが真っ先に紹介してくれたのは『やっぱりおおかみ』。幼い頃は、読んでも意味がほとんど分からなかったという。

「それでも、絵がかわいくて、好きでよく読んでいたんですよね。で、大学生になったとき、本屋さんで見かけて『あ、これちっちゃい頃に読んでいたな〜』と手にとって再読したら……『こういうことが書いてあったんだ!』って、すごくビックリしました」

ひとりぼっちの子どものおおかみが「自分は自分しかいない」という結論にいたるまでの迷いと葛藤。確かに小さな子どもにとっては、少々難しいテーマではあったのだけれど……。

「なんか、子どもながらに心に残っていたんですよ。絵本って、印象に残れば、大きくなってから、もう1回読んでもらえる可能性があるんですよね。そんなふうに “人生で2回出会うことができる絵本” が、僕にとっての理想的な絵本です。何もかもちゃんと分かることだけが大事なわけではなくて。分からない部分がかえって魅力になることもある。子どもが『これ、分かりたい』って興味を持つことは “大人になりたい” という、成長することへの希望にもつながるはずなんです」

 

読み聞かせしてもらうより、
自分の好きなペースで
じっくり読んだり、戻ったり、
ひとりで読むのが好きな子もいる

母が大の本好きだったため、家には絵本がいっぱい。当然のように、読み聞かせもたくさんしてもらったというヨシタケさんだが、実は絵本の読み聞かせについては、複雑な思いがある。

「読み聞かせをしてもらえばもらうほど、自分のペースで読みたくなるんですよ。あ〜っ、もうページめくっちゃった! そこの絵をもっと見たかったのに〜って(笑)。子どもが自分の好きなときに、好きなものを、好きなペースで読める。それが絵本のよさなわけで。僕自身、こっち読んで、あっち読んで、また戻って……という読み方が好きだったので、僕が作る絵本も読み聞かせには向いていないんです(笑)」

2人の男の子のパパでもあるヨシタケさん。元気いっぱいの子どもたちの日常の姿を見ていると、自分の子どもの頃の記憶も瑞々しくよみがえる。

「狭いスペースにもぐりこんでみたり、眠くなるとグズったり。『あ〜そういえば、俺もやった、やった』って、子ども時代の思い出に確証が持てるんですよね。子どもの仕草が、どんどんネタになっていく部分はあります(笑)」

画像: 読み聞かせしてもらうより、 自分の好きなペースで じっくり読んだり、戻ったり、 ひとりで読むのが好きな子もいる

 

子どもの事情と大人の事情。
僕の作る絵本が、両者の間を
取り持つ存在になれたら嬉しい

一方、親になってみて初めて、大人側にもさまざまな事情があることを、しみじみ実感できるようになった。

「大人も大変だし、子どもも大変。だからこそ、両者がお互いに優しくできて、歩み寄れるようなものを何か提案できないかなと。僕が新しい絵本を作らせていただく意味は、そのへんにあるのかなという気がしています『大人もけっこういい加減なんだよ。それでもどうにかなっているんだよ』っていうことを教えてあげるだけで、救われる僕みたいな心配性な子どもって、きっと世の中にいるはずですから(笑)」

 

[ ヨシタケ、これもオススメ ]

意地っ張りな男の子の心理描写がリアル!

『いやだいやだのスピンキー』

作・絵:ウィリアム・スタイグ 訳:おがわえつこ ¥1500/らんか社

ちょっとしたことで、すっかりスネてしまった男の子スピンキー。家族や友達が機嫌をとっても知らん顔をしているうちに、仲直りのきっかけを失いそうになるのだが……。「作者が『ザ・ニューヨーカー』誌などでマンガを描いていた人だけあって、子どもがスネたときの表情や仕草の表現力がずば抜けてうまい。ユーモアが光る最後の一文は、『実際そうだよね~』って、親なら共感してしまうはず。画力と言葉のセンスにやられちゃいます」

 

読み手の想像力をとことん刺激する1冊

『ハリス・バーディックの謎』

作・絵:C・V・オールズバーグ 訳:村上春樹 ¥1600/河出書房新社

謎の人物ハリス・バーディック氏が残した14枚の絵には、題名と短い説明文だけがついていた―。「ある男が14 の話を書き、さらにそれぞれの話に描いた1枚ずつの絵だけを1冊の本にまとめたという設定。僕、最初に1ページ目の説明を読んだとき、実話だと思ったんですよ。この絵本の企画自体が壮大なフィクションになっているのだと気付いたときは衝撃で(笑)。ため息が出るくらい美しい絵だからこその説得力があります」

 

人それぞれに時間が流れていることを実感

『105にんのすてきなしごと』

文:カーラ・カスキン 絵:マーク・シーモント 訳:なかがわちひろ ¥1300/あすなろ書房

金曜日の夕方、105人の男女が仕事に出かける用意を始める。まずはみんなお風呂に入り、そして……。「オーケストラのメンバーが、それぞれの家で準備をして、ホールに集まり、コンサートが始まるまでを丁寧に追ったストーリー。どんな人にも日常があるっていう、ごくごく当たり前のことを描いているだけなんだけど、そこがすごくおもしろい」

 

Design:Asami Sato + Megumi Moriya(SATOSANKAI) / Illustration:Yuka Hiiragi / Interview&Text:Keiko Ishizuka

 

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